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自閉スペクトラム症の新たなモデルマウスを開発 -オミクス解析による分子病態理解と治療法開発への期待-
本研究グループは、自閉スペクトラム症(ASD)の有力なリスク遺伝子KMT2Cの遺伝子改変マウスモデルが、社会性や柔軟性の低下といったASD様行動を示すこと、脳において病態に関与し得る遺伝子群の転写制御の変化が起こっていること、これらの行動や転写制御の変化がヒストン脱メチル化酵素LSD1の阻害剤の投与によって回復することなどを明らかにしました。本研究成果は、ASDの分子病態メカニズムの更なる理解や治療法開発に貢献することが期待されます。「Molecular Psychiatry」(3月26日付)に掲載されました。
Ca2+やcAMPを感知する蛍光タンパク質を開発 ―生きた動物の細胞内セカンドメッセンジャーの動きを観察する―
本研究では、高感度にCa2+(カルシウムイオン)を感知する赤色の蛍光タンパク質「RCaMP3」と、cAMP(3'-5'-アデノシン一リン酸)を感知する緑色の蛍光タンパク質「cAMPinG1」を開発しました。Ca2+とcAMPは神経系に限らず多くの臓器や生物種において重要な役割を果たすセカンドメッセンジャーであることから、新規センサーは生物学分野のイメージング法に広く応用されることが期待されます。本研究成果は「Nature Methods」(3月21日付)に掲載されました。
社会的孤立による社会的認知機能の低下を改善させる薬を発見-他者を区別する神経メカニズムの解明にも期待
本研究では、ケタミンの鏡像異性体を麻酔用量よりも低用量投与したネズミの全脳の神経活性化パターンから、(R)-ケタミンだけに顕著にみられる神経活動の変化として島皮質の活性化を捉えることに成功しました。さらに島皮質の人工的な神経活動操作を行うことにより、(R)-ケタミンが社会的認知機能を改善させることを解明しました。これにより、様々な精神疾患でみられる社会的認知機能の低下に対する新たな治療法の開発に繋がることが期待されます。本研究成果は「Molecular Psychiatry」(2月23日付)に掲載されました。
国際共同研究コンソーシアムENIGMAによる2,000名を超える磁気共鳴画像(MRI)の脳構造画像データの機械学習を行い、精神病ハイリスク群の発症群と健常対照群を70%以上の確率で判別可能な機械学習器を開発しました。今回開発した機械学習器は、多施設から得られた脳画像を適切に結合し、思春期の複雑な脳発達変化による影響を考慮することで高い判別率を得ることができました。今後、臨床現場で必要とされるバイオマーカー開発への応用だけでなく、精神病発症に関わる脳病態の解明に貢献することが期待されます。本研究成果は「Molecular Psychiatry」(2月9日付)に掲載されました。
革新脳・国際脳合同イベント「読み解かれつつある脳の設計図」イベントレポート
2023年10月19日に開催された「読み解かれつつある脳の設計図 ~革新脳・国際脳の成果と脳疾患克服への展望~」のイベント報告がAMED広報ウェブマガジン「AMED
Pickup」に掲載されました。
同イベントで発表された最新の脳研究成果が分かりやすく紹介されています。ぜひご覧ください。
マウス腎臓被膜下に移植した卵巣からマーモセット卵子の取得、胚生産に世界初の成功 -ヒト生殖補助医療に資する胚操作技術の開発-
ヒト疾患の解明や治療法の開発には、小型霊長類のマーモセットを遺伝子操作した動物モデルが極めて有用ですが、その作製には多くの胚を必要とします。本研究グループは、胚を作製する新しい方法の開発のため、全国のマーモセット研究者からマーモセット卵巣の提供を受け、マウスの腎臓被膜下に移植し、ホルモン投与により成熟させた卵子を採取し、受精させて胚を生み出し胚盤胞を作ることに成功しました。異種間移植により子宮に着床可能な霊長類の胚を得たのは世界初です。本研究成果は「Scientific Reports」(10月24日付)に掲載されました。
理研クローズアップ科学道に革新脳プロジェクト 中核拠点(理化学研究所 脳神経科学研究センター)の渡我部 昭哉研究員のインタビュー記事が掲載されました。
2023年5月に革新脳プロジェクトの主要な成果として発表された「マーモセットの脳の地図」作成とその研究成果について分かりやすく解説されています。
全文は理化学研究所Webサイトをご覧ください。
脳予測に関わる誤差信号が高次聴覚野から一次聴覚野へフィードバックすることを発見 ―ミスマッチ陰性電位の正体の一端が判明―
本研究では、霊長類コモンマーモセットの大脳皮質聴覚野の神経活動を高い空間解像度でイメージングすることで、同一の音がある時間間隔で繰り返して鳴っているときに、逸脱音が入り込むとその直後に、高次聴覚野前方部から一次聴覚野へ予測誤差信号がフィードバックすること、これが一次聴覚野の逸脱音に特異的な反応成分(ミスマッチ陰性電位)の正体であることを明らかにしました。本研究成果は、統合失調症患者で減弱するミスマッチ陰性電位のメカニズム解明につながると期待されます。本研究成果は「Nature Communications」(11月13日付)に掲載されました。
時空間での蛍光相関解析が生体深部超解像イメージングを可能にするー生きた脳の深部でナノスケールの神経細胞微細形態の可視化に成功ー
本研究では蛍光顕微鏡観察像の時空間相関解析に基づく超解像法SRRFを二光子励起顕微鏡に適用することで、これまで観察が困難であった生体脳深部(脳表から500μm)のナノスケールの神経細胞微細形態を可視化することに成功しました。この手法は画像解析による手法であり、一般的な二光子励起顕微鏡の観察に容易に適用できる一方で、既存超解像顕微鏡法と同等の空間分解能・形態再現性を生体深部で達成できることから、神経科学のみならず、生体深部の微細な空間で生じる様々な生命現象の解明に貢献することが期待されます。本研究成果は「Frontiers in Cellular Neuroscience」(10月10日付)に掲載されました。
本研究グループは、思春期を対象としたコホート研究を行い、13歳から16歳における心理的困難さの変化と脳波により測定されるミスマッチ陰性電位の変化が関連することを明らかにしました。この結果は、思春期の心の不調のメカニズム解明に役立つ可能性があり、心の健康増進に貢献することが期待されます。本研究成果は「Cerebral Cortex」オンライン版(10月10日付)に掲載されました。
全パルス光源・タイムゲート検出系を駆使した超解像二光子顕微鏡の開発 ー脳組織「ナノ」イメージングの新たなアプローチー
本研究では世界ではじめて全パルス光源・タイムゲート検出系を駆使した超解像二光子励起顕微鏡(全パルス式二光子STED顕微鏡)を開発し、タイムゲート検出がこれまで考えられてきた以上に脳組織の二光子STED像の空間分解能の向上に寄与することを見出しました。脳組織深部などで起こる”ナノスケール”の生命現象をありのままに可視化し、生物学・医学研究の更なる発展に貢献できることが期待されます。本研究成果は「PLOS ONE」(8月24日付)に掲載されました。
トラウマ記憶はどのようにして脳内に作られるのか 〜光と機械学習で脳神経細胞ネットワークレベルの変化を初めて解明〜
恐怖心の制御は人や動物の生活で非常に重要です。強い恐怖体験の記憶、すなわちトラウマ記憶は、実生活に様々な不自由をもたらすこともあります。近年の研究で脳のどの部位が関わるかは分かってきたものの、詳細な仕組みは未知の部分が多く、関連する精神疾患では決定的治療法が確立出来ていません。本研究グループは、光学と機械学習の融合的新手法によりトラウマ記憶に関わる脳神経細胞ネットワークを検出することに成功し、記憶形成に伴う複雑な変化を捉え、トラウマ記憶が生まれる仕組みを解明しました。本研究成果は「Nature Communications」に掲載されました。
薬剤副作用として知られるジスキネジア(体のくねくね・口のもごもご)が進展していくメカニズムを解明
本研究グループは動物モデルを用いて、L-DOPA誘発性ジスキネジア(LID)と遅発性ジスキネジア(TD)に共通する分子病態、すなわち線条体神経細胞における小胞GABAトランスポーター(VGAT)の過剰発現を発見しました。VGATの過剰発現は、線条体神経細胞におけるドパミン信号の低下(素因に相当)に、脳内ドパミン濃度の繰り返す変動(環境因に相当)が加わることで生じることが分かりました。この知見は長い時間をかけて環境因が累積してはじめて発症にいたる新たな発病モデルを提供します。本研究成果は「Cell Reports Medicine」オンライン版(9月28日)に掲載されました。
AIと人間の対話的手法によりミトコンドリア内部立体構造の可視化に成功 ―ミトコンドリア融合因子OPA1の新たな役割を発見―
本研究グループは深層学習と人間による対話型画像解析プラットフォームPHILOWを開発し、電顕画像からの目的構造の抽出を圧倒的に正確かつ高速化しました。その結果、ミトコンドリア全体の内部膜(クリステ)立体構造を、人間の力を超えた(superhuman)精度で初めて可視化し、定量的に解析することが可能になりました。実際に今回、この手法を用い、優性遺伝性視神経萎縮症の発症と非常に高い関連が知られるOPA1タンパク質のクリステ形成制御における新たな役割を解明しました。本研究成果は「PLOS Biology」に掲載されました。
本研究グループは、ラットにおいて最近の成功経験が大脳基底核の黒質や線条体の神経細胞の行動に関わる活動を広範に増強することをつきとめました。この増強は従来説に基づく黒質から線条体へのドーパミン作用だけでは説明できず、大脳皮質からの入力情報の重要性を示唆しています。適切な行動を学べない精神・神経疾患の新たな理解や治療法の開発につながることが期待されます。本研究成果は「Communications Biology」(9月6日オンライン)に掲載されました。
脳体積による精神疾患の新たな分類を提案 認知・社会機能と関連、精神疾患の新規診断法開発への発展に期待
日本全国の多施設共同研究体制の14研究機関の統合失調症などの4大精神疾患のMRI脳画像データセットを用いた研究です。本研究では大脳皮質下領域構造の体積によるデータ駆動型の新たな分類を提案し、この分類が認知機能および社会機能と関連することを見出しました。この成果は、精神疾患の新たな客観的診断法の開発に役立つと期待されます。本研究成果は「Molecular Psychiatry」オンライン版(8月4日付)に掲載されました。
Nature記事広告特集: Focal Point on Brain Science in Japan
国際的な総合科学雑誌Natureオンライン版に、⾰新脳・国際脳の研究成果を紹介する記事広告特集「Focal Point on Brain Science in Japan」が掲載されました。
統合失調症の発症早期における聴覚関連脳波応答の特徴が明らかに
本研究グループは、精神病ハイリスクの方と統合失調症発症早期の患者で、聴覚ガンマオシレーションが低下する一方、自発ガンマオシレーションは変化しないことを明らかにしました。ガンマオシレーションは、神経細胞が発する信号のひとつで、脳の情報処理基盤に関わると考えられており、この結果は、統合失調症の発症や進行のメカニズム理解に役立つ可能性があり、今後の診断、治療法開発研究への応用が期待されます。本研究結果は「Translational Psychiatry」オンライン版(6月27日)に掲載されました。
超高磁場MRIで見る霊長類「全脳」神経回路の多様性―分野横断型の霊長類脳標本画像リポジトリ:ヒト脳と精神・神経疾患の理解を加速する国際研究基盤―
本研究グループは、戦略的国際脳科学研究推進プログラムとジョンズ・ホプキンス医科大学との国際連携により、世界最大級の霊長類脳標本コレクションを対象に、マーモセットからチンパンジーまでの多種多様な霊長類の「全脳」の神経回路を非破壊的かつ高精細に可視化した脳画像を撮像し、霊長類脳標本画像リポジトリを開発しました。本リポジトリは、広範な霊長類の脳情報を提供し、データ駆動型科学を通じてヒトの脳の特性や精神・神経疾患の理解を深めるための重要な資源となっています。本研究成果は「Neuroimage」に招待論文として掲載されました。
脳機能の中核を担うAMPA受容体を「見る」ことで解明 ―てんかん患者の脳機能の調節におけるシナプス可塑性の重要な役割が明らかに―
本研究では、AMPA受容体を可視化するPET用のトレーサーを用いて、AMPA受容体のダイナミクスが、てんかん患者の脳機能を差次的(特性ごとにそれぞれ)に調節することを解明しました。AMPA受容体は脳の働きを支える重要な分子であり、この分子をヒトの生体脳で可視化することで、これまでブラックボックスであった精神・神経疾患の病態解明や、その情報を根拠にした革新的な診断・治療法の開発が進むと考えられています。研究グループが開発したPET用トレーサーを用いた臨床研究により、てんかん発生の生物学的なメカニズムの解明に近づくことができました。 本研究成果は「Cell Reports Medicine」(5月17日オンライン)に掲載されました。
マーモセットの前頭前野結合マップを作成・公開-霊長類特有の神経回路構造にヒント-
本研究では、マーモセット前頭前野(PFC)の系統的な全脳結合マッピングを行い、焦点型と拡散型の2種類の神経投射が、大脳皮質及び線条体それぞれに、トポグラフィックに結合することを見出しました。この新しいリソースは、革新脳データポータルで公開され、霊長類前頭前野の局所及び遠距離の回路結合の理解を深めるものと考えられます。本研究成果は「Neuron」オンライン版(5月16日付)に掲載されました。
血液脳関門開放術による遺伝子治療法の開発―身体を傷つけない脳疾患の治療を目指して―
本研究では、新規に開発したウイルスベクターと経頭蓋集束超音波照射を利用したベクターデリバリー手法により、サルの血液脳関門を物理的かつ一時的に開放して、血管内投与したベクターを脳の目標部位に局所的に導入し、外来遺伝子を発現させることに成功しました。このことは、非侵襲的に脳部位選択的な遺伝子導入を可能にする手法が確立されたことを示しており、今後、パーキンソン病などの神経疾患に対する安全な治療法の開発に寄与することが期待されます。本研究成果は「Science Advances」に掲載されました。
MRIによる霊長類のデジタル脳データベースを開発-オープンサイエンスとして、脳科学の発展に期待-
磁気共鳴画像法(MRI)を用いて、小型霊長類であるコモンマーモセットのデジタル脳データベースを開発し、公開しました。年齢・性別・体格(体重)などの幅広い情報を含んでおり、現時点で世界最大のコモンマーモセット脳の公開データベースです。年齢・性別・体格などの要因が脳に与える影響を理解するのに役立ち、また、オープンサイエンスとして世界中の脳科学コミュニティの発展に貢献し、研究を加速させると考えられます。本研究成果は「Scientific Data」オンライン版(4月27日付)に掲載されました。
統合失調症、うつ病、双極性障害に関連した脳内ネットワーク異常を発見
日本国内3施設(東京大学、京都大学、広島大学)の4つの大規模安静時fMRI画像データセットを用いて、統合失調症、うつ病、双極性障害における7つの脳内大規模ネットワーク間の因果性結合をDCMを用いて評価し、比較することで、大脳辺縁ネットワークにおける自己抑制性の因果性結合が3疾患で共通して減少していることを明らかにしました。これらの発見は精神疾患の病態解明につながる可能性を示唆しています。本研究成果は「Schizophrenia Bulletin」に掲載されました。
革新脳プロジェクト 中核拠点(理化学研究所 脳神経科学研究センター)の村山正宜チームリーダーが令和4年度「中谷賞奨励賞」を受賞しました。「細胞の個性と脳の全体性を捉える広視野高速2光子顕微鏡の実現」による研究成果・業績が高く評価されました。
Cre組換え酵素による遺伝子スイッチを高精度で選択的に制御する新規ベクターシステムの開発
AAVベクターを利用したFLEXシステムでは、組換え酵素を発現しない細胞で導入遺伝子の発現がリークする現象が問題になっていました。われわれはこの発現がベクター調製時におこる細胞内での組換えに起因することを見出し、片側スペーサー配列(USS)を認識配列の間に挿入することで導入遺伝子のリーク発現を防止することに成功しました。FLEX/USS法によって目的の細胞種や神経路における選択的な遺伝子発現を高精度にコントロールすることが可能となり、神経回路の構造や機能の詳細な理解に繋がることが期待されます。本研究成果は、「Cell Reports Methods」に掲載されました。
脳内のアルツハイマー病変を早期検出する血液バイオマーカーの産生機構を解明
現在、アルツハイマー病患者脳内の病変を簡便かつ正確に診断する技術の開発が求められています。APP669-711は脳内アミロイドβ蓄積を反映する血液バイオマーカーを構成する分子として同定された新しいペプチドですが、どのように産生されるのかについては一切不明でした。本研究により、ADAMTS4と呼ばれるメタロプロテアーゼがAPP669-711の産生に関わっていることを明らかにしました。本成果は血液中のAPP669-711を利用した脳内アルツハイマー病変診断技術の精緻化に繋がることが期待されます。本研究成果は、「Molecular Psychiatry」に掲載されました。
マウスにおいて恐怖による摂食抑制を担う神経基盤(lPB-PSTN経路)を世界で初めて解明 ~ ストレスと摂食制御を関連づける中枢メカニズムの解明に期待 ~
マウスの脳幹にある外側腕傍核(lPB)から視床下部の傍視床下核(PSTN)への経路が、恐怖によって生じる摂食抑制に重要な役割を担うことを発見しました。これまで、摂食行動が恐怖やストレスなどによって大きく左右されることは知られていましたが、その神経回路制御の仕組みはよく分かっていませんでした。本研究により、ストレスや恐怖と摂食行動との相互作用を担う中枢メカニズムの解明に大きな進展が期待されます。本研究成果は、「Nature Communications」に掲載されました。
村山正宜チームリーダーが令和4年度「日本学術振興会賞」を受賞
革新脳プロジェクト 中核拠点(理化学研究所 脳神経科学研究センター)の村山正宜チームリーダーが第19回(令和4年度)「日本学術振興会賞」を受賞しました。「知覚・記憶に関わる広域回路網の同定とその動作原理を理解するための新規技術の創出」による研究成果・業績が高く評価されました。
脳領域間の相互通信を一挙に観測する手法を開発! 脳の通信プロトコル解読に向けてさらなる前進
脳の異なる領域間で相互にやりとりしている神経スパイク信号を一挙に観測することを可能にするスパイクコリジョンテストの自動化・並列化に成功しました。この技術は、多チャンネル電極で多数の神経細胞のスパイク信号を同時に記録し、瞬時に処理して、複数の箇所の脳内刺激を制御するリアルタイム実験システムを構築することによって実現しました。「脳の通信プロトコル(手順)」を解読する研究を大きく前進させることが期待されます。本研究成果は「iScience」に掲載されました。
多色蛍光シグナル増幅システムFT-GO法の開発に成功 ― 操作安定性が高く簡便な多色蛍光シグナル増幅システムを構築 ―
グルコースオキシダーゼによるグルコースの酸化反応とチラミドシグナル増幅法(TSA法)とを組み合わせることにより、操作安定性が高く簡便な多色蛍光シグナル増幅システムである、FT-GO (Fluorochromized Tyramide-Glucose Oxidase) 法の開発に成功しました。FT-GO法は、従来の一般的な検出法である間接法と比較して約10倍から30倍、直接法と比較して約60倍から180倍のシグナル増幅を可能にし、組織化学解析において幅広い使用が期待されます。本研究成果は「Scientific Reports」に掲載されました。
神経変性疾患の原因となる異常タンパク質を生体脳で画像化することに成功 ‐異常タンパク質「αシヌクレイン」病変を捉えるPET薬剤を産学連携で創出‐
多系統萎縮症において、原因と考えられるタンパク質であるαシヌクレイン病変を、生体脳で明瞭に画像化することに成功しました。本研究では、製薬企業3社との連携によってαシヌクレイン病変を捉える放射性薬剤を開発し、高感度の可視化を実現しました。αシヌクレイン病変はパーキンソン病やレビー小体型認知症でも中心的な病変となることから、本技術は多様な神経難病の発症機構解明や、診断治療に大きく寄与することが期待されます。本研究結果は「Movement Disorders」に掲載されました。
パーキンソン病の認知機能障害は鼻からはじまる?―レヴィ小体病における嗅覚系伝播経路の解明―
パーキンソン病やレヴィ小体型認知症を含むレヴィ小体病ではαシヌクレインが脳内を伝播することで病態が進展すると考えられています。マーモセットの嗅球へαシヌクレインの凝集体を接種することで、レヴィ小体病における嗅覚系伝播経路を再現し、陽電子断層撮影(PET)画像を用いて脳機能が低下することを示しました。本研究成果は「Movement Disorders」に掲載されました。
脳内異常タンパク質の画像から多様な認知症のタイプを自動で判別‐疾患の自動診断に向けてAIを活用した新技術を創出‐
多様な認知症で脳内に蓄積する異常なタウタンパク質(タウ病変)の陽電子断層撮影(PET)画像を人工知能(AI)で解析し、タウ病変の蓄積パターンを自動で評価できる基幹技術を開発しました。タウ病変の蓄積パターンから、代表的認知症である「アルツハイマー病らしさ」と、運動障害を伴う認知症である「進行性核上性麻痺らしさ」の判別に役立つスコアを算出できるようにAIを訓練し、そのスコアによってこれらの認知症が高い精度で識別できるだけでなく、スコアの高さは疾患の重症度の尺度としても有用であることを示しました。本研究成果は「Movement Disorders」に掲載されました。
自閉症モデルマーモセットのストレスホルモンは高値 -自閉症ストレス研究への有用性-
自閉症者は自閉症特有の社会性の障害やこだわりの強さのため、社会での生きづらさのような多くのストレスに面しています。自閉症者のストレスは二次障害としてのうつ病、不眠、消化器障害を引き起こすと考えられており、自閉症のストレスに関する研究は重要です。本研究はバルプロ酸誘導自閉症モデルマーモセットの唾液のストレスホルモン・コルチゾールが高値であることを示しました。また、コルチゾールの高さはモデルマーモセットの社会性の障害の程度と関与しているという結果を得ました。本研究は、自閉症モデルマーモセットの社会性に関わるストレス研究への有用性を示しています。
大脳神経回路形成の新戦略――大脳皮質の多数の領野を結ぶ結合を効率よく作るた めの並列モジュール戦略を解明
本研究では、世界で初めてマウス大脳視覚野と視床核を含む領野間結合がどのように形成されるのかを網羅的に調べ、多数の領野間結合を含む複雑な脳神経ネットワークを効率的に形成するための新たなメカニズムを明らかにしました。本研究の成果は、将来的に先天性盲などの疾患に対する治療法や、優れた人工知能を形成するための回路形成アルゴリズムに応用されることが期待されます。本研究成果は「Nature」オンライン版(8月3日付)に掲載されました。
日本人最大規模の自閉スペクトラム症患者を対象とした全ゲノム解析により、神経細胞シナプス機能の病態への関与を証明
自閉スペクトラム症(ASD)の発症には、遺伝要因の関与が示唆されていますが、その解明は未だ不十分でした。本研究では、日本人ASDを対象としたエクソーム(全ての遺伝子のタンパク質コード領域のゲノム配列を解読する)研究としては最大規模の合計約600名のゲノムサンプルを解析した結果、シナプス機能に関与する遺伝子セットが健常者よりもASD患者で統計学的に優位に多く存在することを示しました。特にシナプス機能に関与するABCA13がASD病態に関与する強いエビデンスが得られ、本研究からASD病態解明へのヒントが示されました。本研究成果は、「Translational Psychiatry」に掲載されました。
自閉症小児が周囲の人を見ないことが、社会脳の発達を障害する可能性を示唆---早期行動療法の開発に有用か---
自閉症の早期介入の長期予後への重要性は認識されていますが、その標準的な治療法は未だありません。本研究では自閉症モデルマーモセットが、小児期に大人のマーモセットを見ている時間と、成長後の自閉症様症状の間に強い相関があることを見いだしました。本研究では、高次社会性テスト(不公平認知、互恵性認知)や習慣への固執テストなど霊長類特異的自閉症症状テストを用いて、幼少期の他者への社会的注意が自閉症の早期治療の対象となる可能性を示すとともに、自閉症モデルマーモセットが自閉症早期治療法開発に有用であることを示しました。本研究成果は「Frontiers in Psychiatry」に掲載されました。
革新脳ウイルスベクターコアの配布ラインナップがさらに充実しました
革新脳ウイルスベクターコアは2018年10月の発足以来、高品質のウイルスベクターの配布実績を重ね、プロジェクト内外の多くの研究機関から好評をいただいています。平井グループ(群馬大学)・小林グループ(福島医科県立大学)・日置グループ(順天堂大)に加え、今年度より高田グループ(京都大学)が参画し、提供可能なAAVベクターのリストがさらに充実しました。
リストにある以外に、「各研究者独自のウイルスプラスミドを使用したAAVベクターの作製」も可能です。また、質問・要望がございましたら、ベクターコア事務局までメールでご相談ください(例:このような細胞に発現させたいがどのカプシド、プロモーターが良いか?等)。ベクターコア内で検討し、できる限り対応いたします。
詳細はウェブページにてご確認の上、ぜひご活用ください。
村山正宜チームリーダーが第6回「バイオインダストリー奨励賞」を受賞
革新脳プロジェクト 中核拠点(理化学研究所 脳神経科学研究センター)の村山正宜チームリーダーが第6回「バイオインダストリー奨励賞」を受賞しました。「広視野・高速・高解像度2光子顕微鏡の開発と生体脳への応用」による研究成果・業績が高く評価されました。
治療薬開発に適したアルツハイマー病モデルマウスの開発―βセクレターゼ阻害薬の開発に貢献―
本研究では、ゲノム編集を利用し新しいアルツハイマー病(AD)モデルマウスを作製しました。このモデルでは、ADに特徴的なアミロイド病理やそれに付随する神経炎症が再現されており、さらにADの治療薬候補の一つであるβセクレターゼ阻害薬の効果を正確に評価できます。また、脳の神経細胞でADに特徴的なエンドソーム異常が起きており、ADの細胞病態解明にも応用可能です。本研究成果は「Science Advances」に掲載されました。
学習・記憶を制御するアセチルコリンの神経細胞内シグナル伝達機構を解明―アルツハイマー型認知症の新治療法の開発に期待―
アセチルコリンは学習に重要であり、その欠損はアルツハイマー型認知症と関わっています。本研究では、忌避学習に至るアセチルコリンの神経細胞内におけるシグナル伝達経路を解明しました。認知症治療薬ドネペジルもこの経路を介して忌避学習を亢進することを示しました。忌避学習は、動物実験におけるアルツハイマー型認知症治療薬のスクリーニングの評価指標として使われています。本研究の成果が、アセチルコリンのシグナル経路を標的としたアルツハイマー型認知症の新しい治療法の開発に繋がることが期待されます。本研究成果は「Molecular Psychiatry」に掲載されました。
光照射とfMRIでサルの脳内ネットワークを明らかに―霊長類におけるオプトfMRI技術に進展―
脳全体の活動を同時に計測する機能的磁気共鳴画像法(fMRI)とオプトジェネティクスとを組み合わせたオプトfMRI技術はネズミの研究で活用が進んでいるものの、霊長類に対しては困難とされ、この10年間成功例が報告されていませんでした。本研究では、効率的なオプトジェネティクスと超高磁場7テスラMRIとを組み合わせ、サルの大脳皮質運動野を光で活性化したときの脳全体の活動を可視化することに成功しました。本研究成果は「Cerebral Cortex Communications」に掲載されました。
双極性障害・統合失調症・自閉スペクトラム症の発症に関与する、ゲノムコピー数変異(CNV)の共通性と特異性を同定
双極性障害(BD)、統合失調症(SCZ)、自閉スペクトラム症(ASD)のゲノムコピー数変異(CNV)解析から、BDでは小規模な欠失が多く、SCZ・ASDでは大規模CNVが多くみられました。神経発達症と関連する既知のリスクCNVは、3疾患の発症に関連しましたが、BDリスクに対する影響度は相対的に小さいものでした。BDではクロマチン機能の関与が示唆され、SCZ・ASDではより広範でオーバーラップする分子メカニズムの関与が示唆されました。ノンコーディング領域のCNVは、SCZ・ASDの発症に関与することが示唆されました。本成果は「Biological Psychiatry」に掲載されました。
マーモセットを用いて霊長類の脳機能のメカニズムを調べるため、どのようなタスクを行うべきか前頭前野に着目し、代表的なタスクを取りまとめました。将来的な脳機能マッピングを意識し、主要な側面をなるべく少数のタスクでカバーすることを意図しています。本サイトは革新脳マーモセット脳機能データベース検討ワーキンググループの承認の元公開を行いました。継続的にアップデートを行いますので、ぜひご活用ください。
/pfctaskset/
滑らかな運動はどう実現されるのか―大脳基底核の視床下核が運動を制御するメカニズム―
神経活動を可逆的に操作する化学遺伝学をニホンザルに用いて、視床下核の活動を抑制したところ、不随意運動が起き目標に手を伸ばす運動が不安定になりました。視床下核の抑制前後で、大脳基底核の出力部である淡蒼球内節の神経活動を計測・比較したところ、神経活動の大きさはあまり変化しませんでしたが、発火パターンの変動は増大しました。さらに、この発火の変動は特に運動時間が長い試行では大きく、不随意運動の直前に神経活動が変動していました。これらの結果は、視床下核が大脳基底核の出力を安定化させることで、滑らかな運動を実現していることを示しています。本研究結果は「Nature Communications」に掲載されました。
パーキンソン病の新たな治療法を開発―運動皮質の神経活動に基づき脳深部刺激療法の刺激方法をコントロールする―
進行期のパーキンソン病に対して、視床下核に電極を挿入して連続的に電気刺激を加える脳深部刺激療法(DBS)が有効ですが、刺激への慣れによる効果の減弱や、早い電池消費などの問題がありました。パーキンソン病モデルサルを用いて、運動開始に関連する運動皮質の脳波をもとにDBSの刺激強度と頻度をコントロールするようにしたところ、従来の連続型DBS型と同程度、場合によってはより治療効果があり、消費電力も約2/3に減少することがわかりました。運動皮質の信号に基づき刺激パラメータをコントロールする適応型DBSの有効性が示されました。本研究結果は「Scientific Reports」に掲載されました。
脳のはたらきや病気の理解に向けた研究内容を紹介する「研究紹介動画ライブラリー」がオープンしました
革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト(革新脳)/戦略的国際脳科学研究推進プログラム(国際脳)/領域横断的かつ萌芽的脳研究プロジェクト/精神・神経疾患メカニズム解明プロジェクト、4つのプログラムに参画する研究者が、研究内容を詳しく紹介しています。
下記リンクより是非ご覧ください。
研究紹介動画ライブラリー:https://brainminds-beyond.jp/ja/content_1.html
ストレスによって不安が生じる新しい神経メカニズムを発見―脳とココロのしくみの解明に期待―
ストレスを負荷した脳にある全ての神経細胞の活性化を機械学習によって解析し、ストレス脳では前障という脳領域の活性化が最も特徴的であることを見出しました。また、ストレスに応答して活性化する前障の細胞集団だけを人工的に活性化させると不安様行動が生じること、逆に抑制するとストレス後の不安様行動が抑制されることを見出しました。さらに、ストレスを繰り返して受けるときに前障の神経活動を抑制すると、その後のうつ様行動の発現も抑えられることが明らかになりました。本成果は「Science Advances」に掲載されました。
認知症の病因「タウタンパク質」が脳から除去されるメカニズムを解明―脳内のグリアリンパ系がタウを押し流すことを発見―
脳内の老廃物を除去するグリアリンパ系によって、アルツハイマー病の原因となるタウタンパク質が脳内から脳脊髄液に移動し、その後、頚部のリンパ節を通って脳の外へ除去されていること、またこの過程にアクアポリン4が関与していることを明らかにしました。さらにアクアポリン4を欠損し、脳からのタウの除去が低下しているマウスでは、神経細胞内のタウ蓄積が増加し、神経細胞死も助長されることを見出しました。本研究成果は「Journal of Experimental Medicine」に掲載されました。
脳の神経活動を可視化する新規マウス系統を開発―高感度・高速カルシウムセンサーによる神経活動の計測に成功―
より正確な神経活動計測を実現するため、高感度・高速緑色カルシウムセンサー(G-CaMP9a)、ならびにG-CaMP9aを細胞種特異的に発現誘導可能なトランスジェニックマウスの開発に成功しました。作製したマウスは、カルシウムセンサーの発現レベルが安定して均一なため、複雑な高次脳機能を解明するための有用なリソースとなることが期待されます。本研究成果は「Cell Reports Methods」に掲載されました。
村山正宜チームリーダーが第4回(2021年度)晝馬輝夫 光科学賞を受賞
革新脳プロジェクト 中核拠点(理化学研究所 脳神経科学研究センター)の村山正宜チームリーダーが2021年度 晝馬輝夫 光科学賞を受賞しました。「広視野2光子顕微鏡の実現と脳ネットワークの機能的構造の解明」による研究成果・業績が高く評価されました。
全脳からシナプススケールにズームインするイメージング技術の開発に成功―組織透明化技術と電子顕微鏡技術の融合によりシームレスな観察を実現―
全脳からシナプスまで神経回路構造をズームインしながら観察する技術の開発に成功しました。神経伝達を担う神経線維は小動物でも数cmに及び、その構造解析には光学顕微鏡による観察が適しています。一方、神経結合のエッセンスであるシナプスはnmスケールの構造であり、その観察には電子顕微鏡が必要となります。本研究は、組織透明化技術と電子顕微鏡観察との融合により、全脳からシナプスまでのシームレスな観察を実現し、大規模神経回路の構造解析に貢献します。本研究成果は「iScience」オンライン版(12月27日付)に掲載されました。
革新脳プロジェクト 中核拠点(理化学研究所 脳神経科学研究センター)の村山正宜チームリーダーが2021年度 島津奨励賞を受賞しました。「覚醒マウス脳の広域神経網の活動を検出できる2光子顕微鏡FASHIO-2PMの開発」による研究成果・業績が高く評価されました。
革新脳プロジェクト 中核拠点(理化学研究所 脳神経科学研究センター)の村山正宜チームリーダーがリバネス研究アワード2021 [先端研究推進部門] を受賞しました。先端技術を結集した広視野高速2光子顕微鏡FASHIO-2PMの開発による独創的な研究が評価された結果です。受賞講演レポートはこちら。
【終了】公開シンポジウム「脳とこころの不思議に迫る」のご案内(オンライン開催)
2022年2月6日(日)、脳とこころの研究推進プログラム公開シンポジウム「脳とこことの不思議に迫る~精神・神経疾患の解明にむけた最新研究~」をオンラインにて開催します。高校生以上を対象とした一般向けイベントです(要参加登録)。
プログラム詳細はシンポジウムのウェブサイトをご覧ください。参加ご希望の方はイベントウェブサイトの「イベント参加申込」ボタンからご登録ください。オンラインシンポジウム会場のご案内をお送りいたします。
日時:2022年2月6日(日)13時00分~16時45分(プレイベント:10時30分~11時30分)
対象:高校生以上
共催:自然科学研究機構 生理学研究所、理化学研究所 脳神経科学研究センター
協賛:日本医療研究開発機構(AMED)
小脳の大規模可視化に成功 -マウス小脳における感覚情報表現の仕組みを解明-
本研究では、蛍光カルシウムセンサーyellow cameleonと、超広域マクロ顕微鏡を組み合わせることで、小脳皮質の背側全域を計測可能な実験システムの開発に成功しました。このシステムを用いて2万個以上のプルキンエ細胞の複雑スパイクの発火を測定し、「セグメント」と呼ばれる小区域の活動パターンの組み合わせが全体として身体のさまざまな部位への感覚入力の確率をリアルタイムで表現する、分散型の集団符号化を行っていることを明らかにしました。本研究成果は「Cell Reports」に掲載されました。
アルツハイマー病の新しい治療標的を発見-悪性因子アミロイドβペプチドの分解を促進-
本研究では、アルツハイマー病(AD)の初期病因因子アミロイドβ(Aβ)の脳内分解酵素ネプリライシンの新しい活性制御メカニズムを発見しました。また、そのメカニズムに基づき、高インスリン血性低血糖症の治療薬として使用されているジアゾキシドをADモデルマウスに投与すると、Aβ病理および認知機能が改善されたことから、同薬剤がドラッグリポジショニングとして有用であることが示唆されました。本研究成果は、ネプリライシンを主軸としたADの新たな予防・治療法の開発に貢献すると期待できます。本研究は、「Molecular Psychiatry」オンライン版(11月4日付)に掲載されました。
【募集終了】公開シンポジウム『脳とこころの不思議に迫る』高校生インタビュー企画
AMEDで進められている「脳とこころの研究推進プログラム」の取組を中心に、日本の最先端脳科学研究をテーマとした公開シンポジウムを来年2月に実施いたします。
今回のシンポジウムでは、高校生のみなさんが主体となって参加していただける企画を準備しております。研究の第一線で活躍されている登壇者にインタビューを行っていただき、その様子を動画コンテンツとして制作します。シンポジウム当日には、高校生のみなさんがインタビュー時の感想と共に動画を発表するプレイベントも開催予定です。昨年来のコロナ禍でもオンラインで完結できる体験型プログラムとして全国の高校からご応募いただけます。
ぜひ、参加をご検討ください。
詳細のご案内は以下をご覧ください。
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脳病態における回路の活動異常や病因タンパク質の蓄積が始まる過程の画像化に成功―認知症の理解と創薬への応用に期待―
本研究では、生体脳で神経細胞に脳内レポーターと呼ばれる目印タンパク質を発現させ、神経回路の構造や活動異常をポジトロン断層撮像法(PET)で画像化する技術を開発しました。また、同レポーターを認知症の病因となるタウタンパク質とつなぎ合わせることで、タウが回路に異常蓄積する最初期の過程を生体イメージングする事も可能となり、病態解明や治療薬の評価につながると期待されます。本研究成果は、「EMBO Journal」のオンライン版に掲載されました。
世界初 自閉スペクトラム症モデルマーモセットの開発に成功 -治療薬開発のイノベーションに期待-
本研究では、母親にバルプロ酸を投与して自閉症モデルマーモセットを作成しました。本自閉症モデルはヒト孤発性自閉症の遺伝子発現異常をよく再現していました。つまり、神経細胞やオリゴデンドロサイトに関連する遺伝子が減少し、ミクログリアやアストロサイトに関連する遺伝子が増加していました。しかし、現在の主要なげっ歯類モデルでは、4つの細胞種のうち、多くても2つの細胞種でしかヒトの自閉症を再現していませんでした。霊長類の自閉症モデルは、げっ歯類モデルよりもヒトの自閉症を再現すると予測されてきましたが、トランスクリプトームを比較するという客観的な手法でこれが示されたのは今回が初めてです。本研究結果は「Nature Communications」に掲載されました。
小型新世界ザルのコモンマーモセットは、その解剖学的・機能的・行動学的特性、また繁殖能力や遺伝子改変技術が適用可能であるといった利点から、神経科学および生物医学の分野でモデル動物として大きな注目を集めています。本稿では、マーモセットを用いた神経科学研究の進展と、疾患モデル研究への応用および展望について概説しています。革新脳中核拠点・岡野栄之プロジェクトリーダーによる総説です。
第三世代アルツハイマー病モデルマウスの作製―アミロイドを標的とした新しい治療法の開発に向けて―
本研究では、アルツハイマー病(AD)患者により近い脳病理を早期から呈する新しいADモデルマウスの作製に成功しました。この新規ADモデルマウスを利用し、AD患者の脳でアミロイドβ(Aβ)ペプチドが蓄積するアミロイド病理の機序がより詳しく解明されることで、Aβペプチドを標的とした新しい治療法の開発に貢献するものと期待できます。本研究成果は「Journal of Biological Chemistry」に掲載されました。
ヒトに近い霊長類であるニホンザルのパーキンソン病モデルを用いて、症状を引き起こす神経メカニズムを明らかにしました。これまでは神経活動の増加や活動パターンの異常によって症状が説明されてきましたが、今回の結果は定説とは異なり、大脳基底核の神経経路のうち「直接路」を通る運動情報の伝達が弱まっていることが、より本質的な変化であることを示しました。また「直接路」を通る情報伝達を回復してやれば症状が軽くなることも示し、パーキンソン病の新たな治療法の開発にもつながると期待できます。本研究成果は「Cerebral Cortex」に掲載されました。
難治性てんかんの手術治療におけるてんかん発生源の診断目的に留置された頭蓋内電極記録により、聴覚ガンマオシレーションが、前頭葉や頭頂葉にまで広がる脳全体の複雑なネットワークから発生することを明らかにしました。この結果は、統合失調症などの精神疾患で低下している聴覚ガンマオシレーションの発生メカニズムの理解につながり、将来の診断や治療の開発に役立つことが期待されます。本研究成果は「Cerebral Cortex」に掲載されました。
マーモセットの遺伝子発現データベースを公開―新しい脳神経科学モデル動物として期待―
コモンマーモセットの脳内で、発達障害や精神疾患にかかわるとされる遺伝子の網羅的な発現解析によってこれらの遺伝子が特定の脳領域に限局した形で発現していることを明らかにしました。また世界中の研究室で一番利用されているモデル動物であるマウスとヒト脳の発現パターンの比較から、マーモセットとヒトでは多くの共通する発現パターンが存在することを明らかにしました。本研究成果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)」に掲載されました。
双極性障害患者神経細胞におけるDNAメチル化変化とその特性を解明
本研究では、双極性障害患者前頭葉試料を用い、神経細胞核分画を行った上で網羅的なDNAメチル化解析を行いました。その結果、患者では多くの遺伝子が低メチル化状態にある一方、精神・神経機能に重要な遺伝子は高メチル化されていることを明らかにしました。DNAメチル化状態に変化のあった領域は、双極性障害との遺伝学的関連が報告されているゲノム領域に有意に集積しており、遺伝要因との関連が認められました。本研究成果は「Molecular Psychiatry」に掲載されました。
脳の宇宙を捉える顕微鏡―世界初、多領域にまたがる神経ネットワークのエコ特性を発見―
本研究では、広視野・高解像度・高速撮像・高感度・無収差を同時に満たす世界初の2光子顕微鏡を開発しました。従来の顕微鏡では、観察視野が狭い、または視野は広くても、空間解像度が低いか、神経活動の記録速度が低速でした。そのため、多領域にまたがる細胞レベルでの広域ネットワークの機能的構造は不明でした。マウス大脳皮質から1万6000個以上の神経細胞の活動を、9mm²(従来の36倍)の単一視野面から7.5Hzの撮像速度で高感度に測定することに成功しました。観測したデータを用いて細胞レベルでのネットワーク解析を行った結果、大脳皮質はスモールワールド性を持つことを世界に先駆けて発見しました。本研究成果は、「Neuron」に掲載されました。
汎化能力を最大化する特徴抽出―信頼性・説明可能性の高いデータ予測―
本研究では、将来の入力を予測するために最も有益な成分を抽出する教師なし学習手法「PredPCA(予測主成分分析)」を開発しました。予測不可能なノイズを除去しつつ、解が一意に定まるような最適化方法によって、テスト予測誤差を最小化できます。例えば、動画から予測の汎化に重要な隠れた特徴を抽出することが可能です。自動運転や医療診断など、解の一意性や精度保証が重要な状況における予測の信頼性の保証に役立つと期待できます。本研究成果は、「Nature Machine Intelligence」に掲載されました。
パーキンソン病モデルへのペランパネルの有効性―パーキンソン病の進行抑制治療への期待―
パーキンソン病では、αシヌクレインという蛋白質が神経細胞に異常に蓄積・凝集し、それが神経細胞の間を伝播することで病状を進行させると考えられています。本研究では、αシヌクレインフィブリルを投与した培養細胞とマウスを用いた実験により、抗てんかん薬の一種である「ペランパネル」が、マクロピノサイトーシスによるαシヌクレインフィブリルの細胞内への取り込みと、引き続いて起きる細胞内αシヌクレイン凝集体形成を抑制することを見出しました。本研究成果は、「Movement Disorders」に掲載されました。
さまざまな動物種からiPS細胞を作出する方法の確立-幹細胞を用いた細胞工学の基盤となる重要なリソース-
本研究では、さまざまな哺乳動物の皮膚の細胞を用いて、最適化された遺伝子セット・培養条件によって人工多能性幹細胞を樹立する新しい方法を確立しました。この方法で樹立されたiPS細胞はリプログラミングに用いた外来遺伝子の”完全に抜けた”細胞である事が解析によって明らかとなり、さまざまな動物モデルを用いた細胞工学において基盤となる重要なリソースである事が分かりました。本研究成果は、「Stem Cell Reports」に掲載されました。
抑制性ニューロンだけに外来遺伝子を発現させる手法を開発 -抑制性ニューロンが関与する精神神経疾患の研究を加速-
本研究では、脳の抑制性ニューロンだけに外来遺伝子を発現させる手法を開発しました。血液脳関門透過型のアデノ随伴ウイルスベクターに本手法を適用することによって、静脈投与のみで、マウス全脳域の抑制性ニューロン選択的に外来遺伝子の発現が可能になります。本研究成果は、「Molecular Brain」に掲載されました。
拡散MRI神経線維追跡手法の神経トレーサーデータに基づく最適化と検証
本研究では、革新脳によるマーモセット脳の拡散MRIと神経トレーサーのデータを活用して、全脳の神経結合(コネクトーム)の推定に用いられるアルゴリズムのパラメタの最適化を行いました。その結果より長距離の神経結合の追跡が可能になるとともに、コネクトーム研究でのパラメタ選択の課題が明らかになりました。本研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されました。
iPS細胞を用いて22q11.2欠失症候群で生じる精神・神経疾患の脳内分子病態を解明
22q11.2欠失症候群患者は、生涯にわたり多様な精神・神経疾患の発症リスクを抱え続けます。本研究では、iPS細胞を用いた解析から、本症候群の脳内分子病態として、「ドパミン神経細胞におけるPRKR-Like Endoplasmic Reticulum Kinase依存的な脆弱性」を見出しました。本研究成果は、「EBioMedicine」に掲載されました。
統合失調症の治療抵抗性の症状に関与する分子・神経回路メカニズムを発見―統合失調症関連遺伝子SETD1Aの新たな機能の解明―
本研究では、統合失調症のリスク遺伝子であるSETD1Aの変異を導入したマウスが、ヒトの統合失調症の症状に似た様々な行動異常を呈することを示しました。内側前頭前野において、シナプス後部のSetd1aがヒストン修飾を介して多様なシナプス関連遺伝子の発現を制御し、興奮性シナプス伝達を強めていることを解明しました。本研究成果は、「Cell Reports」に掲載されました。
運動機能制御に関わる大脳基底核の新しい神経回路モデルを発見―直接路と間接路、2つの経路の相互作用―
本研究では、大脳基底核の直接路と間接路を異なる蛍光タンパク質で同時に標識するウイルスベクターの開発に成功しました。標識した軸索を解析した結果、大脳基底核の中継核である淡蒼球外節において、直接路と間接路が2つの軸索塊を形成し、間接路が支配する領域の中に限局して直接路が投射していることを発見しました。本研究成果は、「iScience」に掲載されました。
アデノ随伴ウイルスベクターを迅速に作製する手法を開発 -遺伝子治療研究/脳神経科学を加速-
本研究では、血液脳関門透過型のアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであるAAV-PHP.eBを迅速かつ簡便に作製する手法を開発しました。このことにより、AAVベクターの研究開発や、脳神経科学の基礎研究を、大きく加速させる効果が期待されます。本研究成果は、「Journal of Neuroscience Methods」に掲載されました。
「脳画像データの機械学習による統合失調症、発達障害の判別手法」を開発
本研究では、複数の精神疾患を分類する脳MRI画像の機械学習器を開発しました。これに統合失調症の異なる臨床病期(精神病ハイリスク、初回エピソード精神病)の脳画像データを当てはめると、統合失調症、健常対照どちらかに判別され、発達障害と判別されることはありませんでした。そのため、本研究による機械学習器は、臨床現場で必要とされる、鑑別診断や治療予測などのマーカーとしての応用が期待されます。本研究成果は、「Translational Psychiatry」に掲載されました。
認知症の一群(FTLD類縁疾患)に共通の発症メカニズムを発見
本研究では、広義FTLD疾患スペクトラム(FTLD、ALS、CBD、PSP)の神経細胞においてFUSとSFPQの核内での会合異常と、これらが制御するタウアイソフォームのバランス異常を見出しました。こうした変化はアルツハイマー病やピック病では存在せず、広義FTLD疾患スペクトラム共通の病態であることが示唆されました。本研究成果は、「Brain」に掲載されました。
ヒト特異的な遺伝子を霊長類コモンマーモセットに発現させると、脳が拡大して脳のシワが作られた―ヒト大脳新皮質の進化過程を解き明かす―
本研究では、ヒトにしか存在しない遺伝子であるARHGAP11Bを発現する非ヒト霊長類コモンマーモセットを作製しました。ARHGAP11B遺伝子導入マーモセットの胎生後期の脳を解析したところ、大脳新皮質が拡大・肥厚し、脳回脳溝構造が、本来はない領域に形成されました。これは、神経前駆細胞の一種であるbRG細胞の増加に起因していることが分かりました。ARHGAP11Bによってもたらされた大脳新皮質の拡大は、進化の過程で起きたヒトの脳の構造的な変化に関連していると考えられます。本研究成果は「Science」に掲載されました。
統合失調症や双極性障害の男性患者ではセロトニン関連遺伝子のDNAメチル化状態が変化
本研究では、統合失調症および双極性障害患者末梢血においてセロトニントランスポーター遺伝子の高メチル化を同定しました。高メチル化状態は男性患者で顕著であり、偏桃体体積と逆相関を示すことを明らかにしました。精神疾患の分子病態の理解と将来的な治療診断薬の開発に貢献すると考えられます。本研究成果は「Schizophrenia Bulletin」に掲載されました。
ヒトECoGによるMMNとN1 adaptationの時空間的分離
聴覚MMNは逸脱刺激に対応する脳活動を反映する誘発電位成分であり、低次な聴覚応答に由来するのか、より高次な処理過程を反映するのか議論が分かれます。本研究は、MMNが低次な聴覚応答であるN1 adaptationと時空間的に分離されることを示しました。MMNの発生機序解明および関連する精神疾患の病態理解への寄与が期待されます。
母子手帳で評価した母乳栄養期間と早期思春期における背側および腹側線条体および内側眼窩回の体積との関連
本研究により、母子手帳をもとに評価された母乳栄養期間と早期思春期児童における脳の灰白質体積(背側および腹側線条体と眼窩前頭前野の体積)とが正の相関を示すことが明らかになりました。これらの結果は、母乳栄養が感情的発達に関連する脳領域の神経発達に重要な役割を果たしていることを示しています。
新しい脳内情報伝達様式を発見―病態の発症・治療への手掛かりに―
意欲行動の開始時には島皮質から線条体へ投射する神経の活動が下がります。にも拘わらず、受け手の線条体神経の活動は上がります。研究グループは、パルブアルブミン陽性の線条体介在神経が、上流の活動を逆転させて下流を興奮させるフィードフォワード脱抑制を仲介する責任細胞であることを明らかにしました。本研究成果は「Cell Reports」に掲載されました。
ミトコンドリアのマイトファジーを可視化する蛍光技術―パーキンソン病の診断と治療に貢献―
本研究では、リソソーム環境に耐性の蛍光タンパク質「TOLLES」を作製し、それを元にマイトファジーを定量的に可視化する蛍光センサー「mito-SRAI」を開発しました。mito-SRAIを用いて、パーキンソン病モデルマウス中脳のドーパミン神経において、マイトファジー不全と細胞死が相関することを示しました。さらに、76,000種の化合物の中からパーキンソン病治療薬の候補を見いだしました。本研究成果は「Cell」に掲載されました。
3次元組織学による全臓器・全身の観察技術を確立―組織の物理化学的性質に基づき理想的なプロトコルを設計―
研究者らは、生体組織の物理化学的物性を詳細に調べ、「電解質ゲル」の一種であることを明らかにしました。この物性を元に組織3次元染色の必須条件を探索するスクリーニング系を構築し、理想的な3次元染色プロトコルをデザインしました。CUBIC-HistoVIsionと命名した新規の3次元染色・イメージング法は、マウスの全脳、マーモセットの半脳、ヒト脳組織ブロック等を均一に染色し、3次元的な全臓器組織観察を可能にしました。本研究成果は「Nature Communications」に掲載されました。
グルコシルセラミド分解酵素はガラクトース転移反応を触媒し、新たに同定された脳内ステロール代謝物・ガラクトース化コレステロールを産生する
今回私たちは、新規脳内ステロール代謝物としてガラクトース化コレステロールを発見しました。また、これまでガラクトース代謝への関与が知られていなかったグルコシルセラミド分解酵素が、ガラクトシルセラミドからコレステロールへのガラクトース転移反応を触媒し、新規脂質を合成することが明らかになりました。
アルツハイマー病発症の初期過程に関わる新規分子CIB1の同定
アルツハイマー病(AD)発症過程では、まずアミロイドβペプチド(Aβ)が蓄積し、続いてタウの蓄積を引き起こして神経変性に至ります。本研究では、ゲノム編集技術CRISPR/Cas9を用いて、AD発症最初期過程であるAβ産生の新規制御分子CIB1を同定しました。また初期AD患者脳でのCIB1発現変動を見出し、AD発症におけるCIB1の寄与を明らかにしました。新たなAD治療戦略の提示に繋がることが期待されます。本研究成果は「The FASEB Journal」に掲載されました。
ライソゾーム病の原因遺伝子がパーキンソン病の発症に関わることを発見―ライソゾーム関連蛋白を標的とした新規治療法への可能性―
本研究では、ライソゾーム病の原因遺伝子であるプロサポシンのサポシンD領域の遺伝子変異・遺伝子多型がパーキンソン病の発症に関わっていることを発見しました。患者由来のiPS細胞から分化させたドパミン神経細胞では、パーキンソン病に特徴的なタンパク質であるαーシヌクレインの蓄積・凝集がみられました。また、患者と同じ遺伝子変異を持つマウスでは、パーキンソン病によく似た運動障害の症状を示しました。パーキンソン病の病態解明や新規治療法、新薬の開発に役立ち、疾患克服に向けて大きな一歩になる可能性があります。本研究成果は「Brain」に掲載されました。
自閉スペクトラム症患者に生じている遺伝子突然変異が脳の発達や社会性に異常をもたらす分子メカニズムを解明―自閉スペクトラム症の治療戦略の開発に期待―
自閉スペクトラム症(自閉症)は、胎児期の脳発達の異常によって発症すると考えられていますが、発症のメカニズムは未だほとんど不明であり、根本的な治療法は存在しません。本研究では、POGZ遺伝子に突然変異を持つ自閉症患者由来のiPS細胞を樹立し、また患者と同じ変異を導入したヒト型疾患モデルマウスを独自に作製し、POGZ遺伝子の突然変異が自閉症の病態と関連することを発見しました。今後、POGZが制御する神経機能を標的とした創薬研究により、自閉症の新たな治療戦略の開発に発展することが期待されます。本研究成果は、「Nature communications」に掲載されました。
統合失調症の患者ではミスマッチ陰性電位が低下していることが知られています。本研究では、統合失調症におけるミスマッチ陰性電位の低下が、脳予測性に関連する成分の障害に由来することを明らかにしました。統合失調症のメカニズム解明に役立つとともに、今後の治療法の開発に向けた研究への応用が期待されます。本研究成果は、「Schizophrenia Bulletin」に掲載されました。
International Brain Initiative:脳科学研究の国際連携を促進する革新的なフレームワーク
International Brain Initiative (IBI)は、日本、韓国、EU、米国、オーストラリア、中国、カナダの各国のブレインプロジェクトが協定を結び、脳科学の国際連携に関する取組を進めており、日本の大型脳研究プログラムとして、国際脳と革新脳がIBIに参画しています。2017 年以降、IBIは複数の会合を実施し、その目標、組織、具体化のための方法論についてその概要がほぼ固まりつつあり、この度、その内容がNeuron 誌に Neuroview として公開されました。
横浜市立大学学術院医学群生理学 高橋琢哉教授らの研究グループは、脳機能を担う最重要分子であるAMPA受容体を、生きているヒトの脳で可視化するポジトロン断層撮影(Positron Emission Tomography: PET)トレーサーの開発に成功しました。AMPA受容体は脳の働きを支える重要な分子であり、この分子をヒトの生体脳で可視化することにより、これまでブラックボックスだった精神神経疾患の病態解明やその情報を根拠にした革新的診断・治療法の開発が飛躍的に進むと期待されます。現在このPETトレーサーを用いて、てんかん診断薬の薬事承認を目指した医師主導治験を同教室が行っています。本研究成果は、「Nature Medicine」に掲載されました。
第3回日本医療研究開発大賞:村山正宜チームリーダーがAMED理事長賞を受賞
革新脳プロジェクト 中核拠点(理化学研究所 脳神経科学研究センター)の村山正宜チームリーダーが第3回日本医療研究開発大賞 AMED理事長賞を受賞しました。
「触覚関連疾患の脳内メカニズム解明に繋がる生理的な知覚とその記憶の神経基盤解明」における顕著な研究成果・業績が認められた結果です。1月10日には首相官邸にて表彰式が行われました(表彰式の様子はこちら)。
うつ病性障害における安静時脳波ベータ帯域パワーと将来の生活の質との相関解析
本研究により、うつ病性障害において安静時脳波測定で得られるハイベータ帯域パワー値が3年後の生活の質を予測することが明らかにされた。この所見は、安静時脳波測定で得られるハイベータ帯域パワー値がうつ病性障害の有用な生物学的指標になり得ることを示している。
ストア作動性カルシウムチャネルが線条体ニューロンにおける遅いカルシウム振動に関与している
線条体ニューロンではカルシウムストアからのカルシウム放出に起因する遅いカルシウム振動が起こっている。我々は、線条体の 9 割以上を占める GABA 作動性ニューロンにおいて、ストア作動性カルシウムチャネルが機能していること、遅いカルシウム振動に関与していることを明らかにした。これらの結果は、ストア作動性カルシウムチャネルが線条体 GABA 作動性ニューロンでのカルシウムシグナル伝達に関与していることを示している。
パーキンソン病前駆期の動物モデルを作製―発症予防や進行抑制に向けた治療法開発の貢献に期待―
本研究では、パーキンソン病(PD)前駆期のモデル動物の作製に成功しました。PDの原因であり異常に蓄積しているタンパク質(αシヌクレイン)を、その本来の発現部位で増加させた遺伝子改変マウスを作製したところ、嗅覚の低下や睡眠異常(レム睡眠行動障害)などのPDの前駆症状に引き続き、ドパミン神経細胞の減少を認めました。本マウスは、PDの発症予防や進行抑制を目的とした治療薬の開発のための動物モデルとして有用であり、また創薬におけるPD発症前あるいは超早期PDに対する治療の標的と分子の発見にも貢献が期待されます。本研究成果は、英国の国際学術誌「Brain」に掲載されました。
複数の精神疾患に共通する大脳白質の異常を発見―統合失調症と双極性障害に共通の異常―
本研究では日本全国での多施設共同研究体制のもと、12の研究機関が連携して、4大精神疾患(統合失調症、双極性障害、自閉スペクトラム症、うつ病)におけるMRI拡散強調画像を用いた大脳白質構造についての大規模解析を行いました。統合失調症と双極性障害における大脳白質領域の異常は似通った病態生理学的特徴をもち、自閉スペクトラム症とうつ病における異常は軽微であり健常者に近い生物学的特徴を有していることがわかりました。本研究の成果は、近年進みつつある精神疾患の客観的診断法の開発に役立つと考えられます。本研究成果は、『Molecular Psychiatry』に掲載されました。
定量的活動依存性マンガン造影 MRI による神経障害性疼痛による脳活動の可視化
神経障害性疼痛と関連した脳領域を明らかにするために、神経障害性疼痛モデルマウスに対して定量的活動依存性マンガン造影 MRI (qAIM-MRI) を用いた神経活動マッピングを行った。その結果、辺縁系と、感覚運動野、梨状皮質、島皮質の神経活動が上昇していることが明らかとなった。この論文は神経障害性疼痛における、脳全体の活動領域を示した最初の報告である。
本研究では、パーキンソン病で見られる、レビー小体の形成、黒質ドパミン神経の脱落など病理学的な特徴を再現したマウスの作製に成功し、パーキンソン病の病態にαシヌクレインの凝集体であるフィブリルの立体構造が大きく影響することを示しました。パーキンソン病の病態解明や新たな治療法の開発への応用が期待されます。本研究成果は、『Movement Disorders』に掲載されました。
コモン・マーモセットの大脳皮質運動野を光刺激することで腕の運動を誘発することに成功
本研究では、霊長類コモン・マーモセットの大脳皮質運動野を光刺激して、腕の運動を誘発することに成功し、異なった腕の動作が別々の領域で表現されている事がわかりました。光刺激による非侵襲的な運動野の機能マッピングが可能になったことで、運動学習や運動障 害のリハビリの過程で起こる脳の運動機能の変化を長期的に計測し、解析することができるようになります。 本研究成果は、『Proceedings of National Academy of Sciences of the United States of America』に掲載されました。
最適な感覚統合で「主体感」を定量化 -心理実験を統一的に再現する理論-
本研究では、人の「主体感」の強さや主体感に応じた時間知覚の違いを「最適な感覚情報の統合」によって説明する理論を提案しました。主体感の強弱が重要とされる法倫理の形成、主体感に影響を与える精神疾患の診断、そして人の主体感を高めることで学習の効率向上や習慣の継続を助ける次世代デバイスの設計などに貢献すると期待できます。本研究成果は、英国のオンライン科学雑誌『Nature Communications』に掲載されました。
本研究では、マイクロビームX線回折という手法を用いて、パーキンソン病患者の脳内に実在するタンパク質異常凝集体であるレビー小体に対する直接的な微細構造解析を行いました。その結果、レビー小体がアミロイド線維を含有していることを世界で初めて証明しました。
本研究成果は、「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載されました。
理化学研究所(理研)脳神経科学研究センター神経老化制御研究チームの橋本翔子基礎科学特別研究員、斉藤貴志副チームリーダー、西道隆臣チームリーダーらの研究チームは、「CAPON」というタンパク質がアルツハイマー病の悪性化に関わることを発見しました。
本研究は、英国のオンライン科学雑誌『Nature
Communications』(6月3日付け)に掲載されました。
複雑な脳回路動態のin vivoイメージングを可能にする多色カルシウムセンサー群XCaMPの合理的エンジニアリング
本研究では、4色の最高性能Ca2+センサー『XCaMP』を開発し、マウス脳内高頻度発火パターンの解読、海馬CA1細胞動態の非侵襲的記録、シナプス前後の発火活動の同時計測、及び3種の異なる細胞種の多重同時計測を実現しました。今後、精神・神経疾患病態における複雑な脳回路ダイナミクス破綻の解明に役立つと期待されます。
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コモンマーモセットはヒト演技者同士の相互的な行動を評価するがニホンザルはしない
相互協力的な社会を築くヒトは、他のヒト同士のやりとりから、誰が協力的であるかを推定しています。本研究で私たちは、協調的な新世界ザル・マーモセットはヒトと同様な認識をしますが、専制的なニホンザルはしないということを示しました。このことからマーモセットは、ヒト自閉症などの社会性の障害の研究に適した動物であると考えられます。
自閉症モデルマーモセットの軸索形成遺伝子の異常と前交連を通る脳左右結合の減衰
本研究では社会性に関わる大脳皮質の左右の脳を結合する構造・前交連が、自閉症モデルマーモセットの新生児で小さくなっていることを示しました。またこの障害の分子基盤を提案しています。この結果は、ヒト新生児でもすでに脳構造異常がある可能性を示し、自閉症の早期診断・早期介入・治療に役立つと考えられます。
2019/2/28より内部サイトへのログインができない状態になっていましたが、復旧しましたのでお知らせいたします。ログイン前に、ブラウザのキャッシュを削除ください。ご迷惑をおかけしました。(革新脳事務局)
日本のBrain/MINDSプロジェクトにおける脳神経倫理問題について
Brain/MINDSプロジェクトは「トランスレータブル」な生物指標を用いてヒトの脳機能と精神・神経疾患についての理解を深めることを目指している。本稿では、臨床データの収集および精神・神経疾患の生物学的病態モデルによって生じる、プロジェクトの脳神経倫理的な問題について述べる。
精神病早期の理解に向けたミスマッチネガティビティ(MMN)のトランスレーショナル研究:総説
ミスマッチネガティビティMismatch negativity(MMN)は統合失調症で低下が頑健な指標で、モデル動物と互換する(translatability)有用なバイオマーカーである。本総説では、早期精神病患者のMMN研究とともに、霊長類やヒトの頭蓋内記録を用いたトランスレーショナルMMN研究を概説した。MMN研究は基礎、臨床研究を架橋し新規治療法開発に貢献することが期待される。
統合失調症におけるガンマオシレーションとD-セリン血漿中濃度との相関解析
本研究により、健常者と比べて統合失調症で低下しているガンマ帯域聴性定常反応(ASSR)が統合失調症においてN-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体のグリシン結合部位のコアゴニストであるDセリンの血漿中濃度と相関することが明らかにされました。この相関はガンマ帯域ASSRが統合失調症においてNMDA受容体機能を反映する可能性があることを示しています。
2/28夕方よりメンテナンスに伴い、内部サイトへのログインができない状態となっています。ご不便をおかけしますが、対応中ですので少々お待ちください。
マーモセット全脳神経投射マップを高効率に作成する包括的な手法
本研究では、マーモセット脳の神経結合マップを高効率に作成する包括的な手法を確立しました。大脳皮質へ網羅的(約2mmのグリッド状)にトレーサーを注入して得られた、詳細かつ大規模な神経結合データをオンラインデータベースで公開しました(http://marmoset.brainarchitecture.org/)。 この成果はマーモセットを用いた脳神経研究の基盤を提供し、その発展に貢献すると期待されます。
第8回 日本マーモセット研究会大会 (大会長:岡野栄之) が 2019年2月6日、7日の2日間にわたり開催されました。基盤技術の開発、発生から病態モデルまで、幅広い講演と多くのポスター発表はたいへん盛況であり、日本のマーモセット研究の裾野の広がりを感じられる大会となりました。
本研究では、遺伝子にコードされた膜電位センサーの比較評価を初代培養神経細胞ならびに生体マウスを用いておこない、各々のセンサーの性能や長所・短所を明らかにしました。本研究で得られた成果は膜電位センサーを選択する際の有用なガイドとなり、神経活動イメージング分野の発展に貢献することが期待されます。
本研究チームは、対物レンズ下の空間に着目した新たな顕微鏡の開発を行い、最大6mm離れたマウス大脳皮質領野での単一細胞解像度を持つ神経細胞活動イメージングを可能としました。本研究成果は、複数領野の神経活動計測を簡便な機構によって実現するもので、今後幅広く脳機能研究に用いられ、分野の発展に貢献することが期待されます。
目標に向けて行動選択をモニターし、更新する線条体の直接路と間接路
本研究では、最先端の生理学的・光遺伝学的実験技術を駆使して、大脳基底核の直接路は行動選択の結果報酬を得た場合にその行動を再選択し、間接路は無報酬であった場合に選択を切り替えることを発見しました。現代心理学の基礎理論「行動は報酬と懲罰によって形成される」の脳内メカニズムの解明に一歩近づく成果です。
世界初・自由行動環境下における霊長類の大脳皮質深部の多細胞活動の計測に成功
研究グループは内視鏡型蛍光顕微鏡を用いて、マーモセット大脳皮質運動野の神経細胞活動を、自由行動環境下で計測することに成功しました。また、計測された個々の神経活動のパターンにもとづき、マーモセットが右側、あるいは左側のどちらに手を伸ばすか行動を予測することができました。
先行研究で、MARCKSのSer46リン酸化がアルツハイマー病発症前に生じる神経突 起変性に対応する病態マーカーであることを報告した。今回さらに、パーキンソ ン病・レビー小体型認知症においても同様の所見を確認し、Ser46リン酸化 MARCKSが疾患枠を超えた変性疾患の超早期共通病態マーカーであることを示した。
腹側被蓋野(VTA)と黒質(SN)はドーパミン起始領域であり、さまざまな脳機能と関連している。本研究では、アジア人種に適したVTAとSNの解剖学的MRIテンプレートを作成し、これらを既存のテンプレートと比較した。さらにMR解剖画像と安静時脳機能画像を用いて、アジア人種テンプレートの妥当性を示した。
プレスリリース 精神疾患治療法開発への応用に期待!―個々の神経細胞の動き方を対象とした新しいアプローチ法―
名古屋大学の尾崎紀夫教授、慶應義塾大学の岡野栄之教授らの研究グループは、統合失調症患者で確認されたリーリン遺伝子の変異(バリアント)が、脳の形態形成で重要とされている神経細胞の移動において、移動方向の安定性に影響することを明らかにした。当該リーリン遺伝子バリアントを起点としたiPS細胞由来神経細胞を用いた本研究成果は、精神疾患の分子病態理解や治療法開発につながると期待される。
著者:
Arioka Y, Shishido E, Kubo H, Kushima I, Yoshimi A, Kimura H, Ishizuka K,
Aleksic B, Maeda T, Ishikawa M, Kuzumaki N, Okano H, Mori D, Ozaki N:
Single-cell trajectory analysis of human homogenous neurons carrying a rare RELN
variant. Transl Psychiatry 8 (1):129, 2018
プレスリリース 統合失調症の労働状態の推定法の開発―病前からの認知機能低下の推定値による確率モデルの有用性―
統合失調症患者の病前からの認知機能低下※1の推定値が、労働状態と関連することを示した。病前からの認知機能低下の推定値などの関連する要因により、労働状態を確率的に推定する方法を提示した。労働状態の推定結果の適切なフィードバックは、統合失調症患者の社会復帰の促進に役立つと考えられる。
プレスリリース 脳内タウ蓄積がアルツハイマー病患者の意欲低下を引き起こす
アルツハイマー病患者では眼窩前頭皮質に蓄積しているタウが多い患者ほど、同部位の神経細胞死や、その部位と他の脳部位を結ぶ線維の障害が重度で、意欲低下も重度であることを明らかにしました。本成果はタウの脳内蓄積を抑えることで、同疾患における認知機能障害のみならず、意欲低下の治療や予防もできる可能性を示唆するものです。
プレスリリース 8Kスーパーハイビジョンカメラによって生きたマウスの脳活動を大規模に計測することに成功
研究チームは、内視鏡手術など医療分野への応用も期待されている8Kスーパーハイビジョンカメラをスピニングディスク共焦点顕微鏡と組み合わせることで、マウス大脳皮質に投射する神経細胞の軸索シナプスの活動を従来の2光子顕微鏡の25倍広い視野で2倍高速で撮影し、1mm以上離れた軸索シナプスの同期活動を計測することに成功しました。
ORIGINAL ARTICLE Abe, H. et al.
CRMP2‑binding compound, edonerpic maleate, accelerates motor function recovery
from brain damage. Science 360, 50–57 (2018)
プレスリリース A spherical aberration-free microscopy system for live brain imaging
理化学研究所(理研)脳神経科学研究センター細胞機能探索技術開発チームの宮脇敦史チームリーダーとオリンパス株式会社イメージングシステムの開発チームは、深部微細構造を鮮明かつ定量的にイメージングする自動球面収差補正システムを共同開発しました。
本研究成果は、Biochemical and Biophysical Research Communications, Volume 500, Issue 2に掲載されました。
プレスリリース CRMP2-binding compound, edonerpic maleate, accelerates motor function recovery from brain damage
脳卒中は深刻な麻痺を引き起こすが、リハビリテーションの薬剤介入は限られている。リハビリテーションによる回復過程は可塑的な現象であり、AMPA受容体のシナプスへの移行はその分子基盤である。我々はAMPA受容体シナプス移行を促進する化合物としてedonerpic maleateを特定した。この化合物は脳損傷後の機能回復をトレーニング依存的に劇的に促進させる。
プレスリリース 脳の深部を非侵襲的に観察できる人工生物発光システムAkaBLI―霊長類動物にも適用可能、高次脳機能のリアルタイム可視化への応用―
理化学研究所(理研)脳科学総合研究センター細胞機能探索技術開発チームの宮脇敦史チームリーダー(光量子工学研究領域生命光学技術研究チーム チームリーダー)と岩野智基礎科学特別研究員らの共同研究グループは、ホタルが産生する化合物(基質)とタンパク質(酵素)をベースに新規の人工生物発光システムAkaBLIを開発し、生きた動物個体深部からのシグナル検出能を飛躍的に向上させました。
本研究成果は、米国の科学雑誌『Science』(2月22日付け:日本時間2月23日)に掲載されました。
プレスリリース アルツハイマー病と前頭側頭葉変性症の共通病態を発見―新たなシグナルを標的とする早期治療法の開発にむけて―
東京医科歯科大学・難治疾患研究所/脳統合機能研究センター・神経病理学分野の岡澤均教授の研究グループは、新規に作成した前頭側頭葉変性症(注1)のモデルマウスを用いて、アルツハイマー病に次ぐ認知症の原因である前頭側頭葉変性症において病態早期に生じるタウタンパク質リン酸化が、シナプス障害を通じて認知症状を引き起こしていることを明らかにしました。
本研究成果は、国際科学誌Nature
Communications(ネイチャー・コミュニケーションズ)に、2018年1月30日午前10時(英国時間)にオンライン版で発表されました。
プレスリリース 統合失調症における社会機能障害への大脳皮質下領域の関与を発見
東京大学大学院医学系研究科精神医学分野の越山太輔大学院生、笠井清登教授、大阪大学大学院連合小児発達学研究科の橋本亮太准教授らの研究グループは、磁気共鳴画像法(MRI,
注3)を用いた研究により、統合失調症において、大脳皮質下領域に存在する視床の体積が健常者に比べて小さいという既知の報告を再現するとともに、統合失調症の社会機能障害に、大脳皮質下領域における神経回路のかなめである視床の体積異常が関与することを新たに見出しました。
本研究成果は、Scientific Reports(オンライン版:1月19日)に掲載されました。
キャンベラで開催された世界主要脳プロジェクト代表者会議に革新脳より岡部繁男プログラムスーパーバイザー、岡野栄之プロジェクトリーダーが参加し、国際ブレイン・イニシアティブを推進することが宣言されました。 IBI Media Release
Current Opinion in NeurobiologyでBrain/MINDSについての総説が発表されました
プレスリリース 「社会のルールの変化」に関わる脳機能ネットワークの一端を解明
玉川大学脳科学研究所の松元健二教授と蓬田幸人特別研究員らの研究グループは、人々の意識が変わることで「社会のルール」が変化することに関わる脳内ネットワークの働きを、脳機能イメージング法を用いた実験により世界で初めて明らかにしました。本研究成果は、2017年11月24日(金)午後7時(日本時間)に英国の科学雑誌“Scientific Reports”に掲載されました。
プレスリリース 細胞周期の間期(G1・S・G2)を3色で識別する技術の開発 -細胞周期可視化技術Fucciの多様化で再生医療などに貢献-
理化学研究所(理研)脳科学総合研究センター細胞機能探索技術開発チームの宮脇敦史チームリーダーと阪上(沢野)朝子研究員らの共同研究グループは、細胞周期をより細かく色分けする新しい蛍光プローブ「Fucci(CA)」を開発しました。本研究成果は、米国の科学雑誌「Molecular Cell」(2017年11月2日号)の掲載に先立ち、オンライン版(10月26日付:日本時間10月27日)に掲載されました。
プレスリリース 統合失調症に関連する遺伝子変異を22q11.2欠失領域のRTN4R遺伝子に世界で初めて同定
名古屋大学大学院医学系研究科精神医学講座の尾崎紀夫教授、Aleksic
Branko准教授、木村大樹助教らの研究グループは、大阪大学大学院医学系研究科/生命機能研究科の山下俊英教授、同蛋白質研究所の中村春木教授らの研究グループとの共同により、統合失調症発症の最大のリスクである
22q11.2欠失領域に存在するReticulon 4
receptor(RTN4R)遺伝子内に、統合失調症病態に強い関連を示すアミノ酸配列変異(RTN4R-R292H)が存在することを、世界で初めて同定しました。
本研究成果は、英国オンライン科学雑誌「Translational Psychiatry」(2017年8月22日付の電子版)に掲載されました。
プレスリリース 発達期小脳において、脳由来神経栄養因子 (BDNF) は シナプスを積極的に弱め除去する「刈り込み因子」としてはたらく
東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻神経生理学分野の秋明貞研究員と狩野方伸教授らの研究グループは、発達期の小脳において、脳由来神経栄養因子(BDNF)がシナプス刈り込みを促進することを発見しました。
本研究成果は、8月4日(金)に「Nature Communications」オンライン版に掲載されました。
プレスリリース 脳全体を高速・精細に観察できる新技術を開発 -脳疾患の機構と創薬研究に貢献-
大阪大学大学院薬学研究科の橋本 均 教授、笠井 淳司 助教、未来戦略機構の勢力 薫
特任助教(薬学研究科招へい教員)らの研究グループは、脳の細胞や神経繊維レベルの微細な構造を識別できる分解能で、マウスや非ヒト霊長類の脳全体を高速
に観察できるイメージング装置(FAST, block-face serial microscopy
tomographyと命名)を開発することに成功しました。
本研究成果は、神経科学分野において権威ある米国科学誌「Neuron」の電子版に6月21日(水)(米国東部時間12時、日本時間、翌6月22日(木)
午前1時)に掲載されました。
プレスリリース 統合失調症におけるグルタミン酸系神経伝達異常の一端を解明
東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻の笠井清登教授、千葉大学社会精神保健教育研究センターの橋本謙二教授らの研究グループは、統合失調症を
主とする初発精神病群において、NMDA受容体機能を反映するMMNが有意に小さく、血漿グルタミン酸濃度が有意に高いことを見出しました。また、血漿グ
ルタミン酸濃度が高いほどMMNが小さいという有意な相関を世界で初めて報告しました。
本研究成果は、初発精神病の一群において、NMDA受容体機能低下などのグルタミン酸系神経伝達の変化を示唆するものであり、統合失調症を主とする精神病性障害の病態解明の一助となることが期待されます。
本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)「革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト」および日本学術振興会・科学研究費
補助金の助成により行われ、国際的な学術誌Scientific Reports(オンライン版)にて日本時間5月23日(火)に掲載されました。
Brain/MINDS Data Portal を開設いたしました
プレスリリース 統合失調症研究に新たな視点 -マウス成熟個体において認知機能を回復させることに成功-
理化学研究所
脳科学総合研究センター行動遺伝学技術開発チームの糸原重美チームリーダー、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)の林悠准教授、東京大学大学院農学生命科学研究科の桑原正貴教授、安田光佑大学院生らの共同研究グループは、新たな機序に基づく「統合失調症モデルマウス」の開発に成功し、このマウスの成熟個体に遺伝子治療を行うと、統合失調症に類似した症状が回復することを発見しました。
本研究は、英国の科学雑誌『Translational Psychiatry』(2月28日付け:日本時間3月1日)に掲載されました。
プレスリリース 世界初!脳の領域間を伝わる信号を一挙に観測できる新手法の開発に成功!脳の通信プロトコルの解読に一歩近づく
玉川大学脳科学研究所(東京都町田市 所長:木村實)の礒村宜和(いそむらよしかず)教授を中心とした、玉川大学・福島県立医科大学・東北大学の共同研究グループは、世界で初めて脳領域間を伝わる信号を一挙に観測できる新手法の開発に成功しました。
本研究成果は、“Cerebral Cortex”(米国の神経科学分野の学術誌 オンライン版)に2017年1月31日(日本時間)に掲載されました。
プレスリリース 脳内にある、やる気のスイッチを発見-意欲障害の治療法探索が可能に-
慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室の田中謙二准教授、三村將教授らは、マウスを用いた実験で意欲障害の原因部位を特定しました。
意欲障害は、認知症や脳血管障害など、多くの神経疾患で見られる病態ですが、その原因については、脳が広範囲に障害を受けたときに起こるということ以外分かっていませんでした。研究グループは、大脳基底核とよばれる脳領域の限られた細胞集団が障害を受けるだけで、意欲が障害されること、この細胞集団が健康でないと意欲を維持できないことを発見しました。
今後は、この意欲障害モデル動物を用いて、これまで治療法が全く分かっていなかった脳損傷後の意欲障害における治療法を探索することが可能になります。
本研究成果は、2017年2月1日にNature Communications(総合科学雑誌)に掲載されました。
プレスリリース 脳内に「やる気」のスイッチ、目で見て操作-霊長類の生体脳で人工受容体を画像化する技術を確立、高次脳機能研究の飛躍的な進展に期待-
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(理事長 平野俊夫)放射線医学総合研究所脳機能イメージング研究部、国立大学法人京都大学霊長類研究所(所長
湯本貴和)、および米国国立精神衛生研究所(NIMH, Director Thomas
Insel)の研究グループは、サルの脳内に発現させた人工受容体を生体で画像化する技術を世界で初めて確立するとともに、標的脳部位に人工受容体が発現
していることを確認したサルに、人工受容体に作用する薬剤を全身投与し、価値判断行動を変化させることに成功しました。
この研究成果は「Nature Communications」に掲載されました。
プレスリリース「ドーパミン受容体の機能に新視点」 -ドーパミン受容体D1R・D2R発現抑制の視認知学習機能への影響-
理化学研究所 脳科学総合研究センター
高次脳機能分子解析チームの山森哲雄チームリーダーらの研究グループは、大脳皮質の下にある線条体尾状核のドーパミン受容体D2Rを特異的に発現抑制すると視認知学習機能が低下するが、D1Rを特異的に発現抑制した場合には変化がない事を、マーモセットを用いて明らかにしました。
本研究成果は、英国のオンライン科学雑誌『Scientific Reports』に11月2日付け(日本時間11月2日)に掲載されました。
Neuronで日本のBrain/MINDSについての総説が発表されました
Neuron “Global Neuroscience” で日本のBrain/MINDSについての総説が発表されました。
Neuron, Volume 92, Issue 3, 2 November 2016, Pages 582–590
nature methodsで革新脳が紹介されました
プレスリリース「ハンチントン病の新しい治療薬シーズを発見」-化合物ライブラリーの統合的スクリーニングから意外な結果
東京医科歯科大学・難治疾患研究所/神経病理学分野の岡澤 均教授(脳統合機能研究センター長)の研究グループは、ハンチントン病の化合物ライブラリーの統合的スクリーニングと、そこから得られた治療薬シーズ(ペプチド化合物)の生理作用と構造情報の解析を行い、それらの作用機序を明らかにしました。この研究成果は、国際科学誌Scientific Reports(サイエンティフィック レポーツ)に、2016年9月22日午前10時(英国時間)にオンライン版で発表されました。
プレスリリース うつ病発症に関わる神経伝達機能の異常を発見-うつ病の病態解明に大きな一歩-
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所脳機能イメージング研究部は慶應義塾大学
医学部精神・神経科学教室と共同で、うつ病患者は視床のノルアドレナリン神経伝達機能に異常が生じており、これが注意・覚醒機能の高まりと相関していることを見出しました。
本研究の成果は、米国精神医学雑誌 The American Journal of Psychiatry 2016年9月16日のOnline版に掲載されました。
プレスリリース 「ハンチントン病の新しい治療戦略を開発」-第3の細胞死を標的とする神経変性疾患治療の可能性をひらく-
東京医科歯科大学・難治疾患研究所/神経病理学分野の岡澤 均教授(脳統合機能研究センター長)の研究グループは、新しい細胞死TRIADの細胞内シグナル経路の詳細を明らかにし、神経変性疾患の一つであるハンチントン病の病態下でTRIADが生じていること、TRIADを標的とすることでハンチントン病の治療が可能であることを示しました。その研究成果は、国際科学誌Human Molecular Genetics (ヒューマン モレキュラー ジェネティクス)に、2016年9月13日午前0時(英国時間)にオンライン版で発表されました。
ニュートン別冊で革新脳が紹介されました
岡野PLがnature neuroscienceで革新脳プロジェクトを紹介
プレスリリース アルツハイマー病の新たな抗体治療に道をひらく-アミロイド凝集前の病態シグナルを治療の分子標的に-
東京医科歯科大学・難治疾患研究所/脳統合機能研究センター・神経病理学分野の岡澤均教授の研究グループは、アミロイド凝集前のアルツハイマー病態で、リン酸化の異常変動を示すタンパク質MARCKSを先行研究で同定しましたが、今回の研究では、MARCKSリン酸化の上下のシグナル経路と病態意義を明らかにし、さらにMARCKSリン酸化を誘導する細胞外分子HMGB1を標的とする、新たなアルツハイマー病の抗体治療法を開発しました。
その研究成果は、国際科学誌Scientific
Reports(サイエンティフィック レポーツ)に、2016年8月25日(英国時間)にオンライン版で発表されました。
プレスリリース 「達成感」による脳内変化を明らかに-新たな学習法や、精神・神経疾患の治療法の開発につながる成果-
慶應義塾大学先導研究センターの山﨑由美子特任教授(理化学研究所象徴概念発達研究チーム客員研究員兼務)、慶應義塾大学医学部生理学教室の岡野栄之教授、理化学研究所象徴概念発達研究チームの入來篤史チームリーダーらは、霊長類のコモンマーモセット(以下、マーモセット)に道具で餌をとらせる訓練を行った後、デジタル脳構造画像解析技術(VBM)という解析方法を用いて、報酬ややる気に関わる脳部位として知られる側坐核の体積を測定したところ、難易度の高い訓練を達成するほど体積増加が起こることを発見しました。本研究成果は、2016年8月8日(英国時間)発行の科学雑誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。
プレスリリース パーキンソン病発症の鍵を握る「αシヌクレイン」の 生体内により近い状態での構造解析に成功 ~ パーキンソン病の根本治療の手がかりに ~
パーキンソン病発症の鍵を握る「αシヌクレイン」を生体内により近い状態で構造解析することに、大阪大学大学院医学系研究科神経内科学の望月秀樹教授らの研究グループが成功しました。
本研究成果はScientific Reportsの電子版に7月29日(金)19時(日本時間)に公開されました。
プレスリリース 脳内マリファナがてんかんを抑えるしくみを解明
東京大学大学院医学系研究科の狩野方伸教授らの研究グループは脳内マリファナの一種である2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)がてんかんを抑制するメカニズムを明らかにしました。また、2-AGが複数のメカニズムを介して神経細胞への興奮性入力を低下させ、てんかんの症状であるけいれん発作や、てんかんの発症を抑制することを明らかにしました。今後、研究が進むことにより、脳内マリファナの働きを利用した新しい抗てんかん薬の開発につながる可能性があります。
この研究成果は、「Cell Reports」2016年7月21日(米国東部夏時間)オンライン版に掲載されました。
プレスリリース 侵害受容と鎮痛制御においてオレキシン神経の活動が果たす役割―覚醒度によって痛みの感じ方が変化する仕組み―
名古屋大学環境医学研究所 山中章弘教授を中心とする研究グループは、視床下部において、オレキシンと呼ばれる物質を産生する神経(オレキシン神経)の活動が、痛みの制御に関わっていることを明らかにしました。
この研究成果は、平成28年7月7日(日本時間)に米国の専門誌「Scientific Reports」に掲載されますした。
プレスリリース 神経損傷マーカー“神経細胞特異的酵素(NSE)”は炎症があると神経細胞ではなくグリア細胞で産生される
群馬大学医学系研究科・脳神経再生医学分野の平井宏和教授らの研究グループは、脳内で炎症が起こるとグリア細胞(アストロサイト)の中でそれまで眠っていたNeuron-specific
enolase
(NSE)を作る遺伝子(NSEプロモーター)が働き出しNSEが産生され、神経細胞では逆にNSEを作る遺伝子が抑えられNSEが消失すること、さらにこの変化は炎症が収まると元に戻ることを発見しました。今回の発見は、脳疾患の診断精度の向上や、細胞レベルでの病態の理解に役立つことが期待されます。
本研究成果は、2016年6月13日(月)に「Scientific Reports」オンライン発表されました。
プレスリリース 統合失調症の発症に関与するゲノムコピー数変異の同定と病態メカニズムの解明
名古屋大学大学院医学系研究科の尾崎紀夫教授らの研究グループは、東京都医学総合研究所、大阪大学、新潟大学、富山大学、藤田保健衛生大学、理化学研究所、徳島大学、Chang
Gung
University(台湾)の研究グループとの共同研究により、統合失調症の発症に強く関与するゲノムコピー数変異を患者全体の約9%と高い頻度で同定し、患者の臨床的特徴および病因の一端を解明しました。
本研究成果は、米国の科学雑誌『Molecular Psychiatry』(2016年5月31日付けの電子版)に掲載されました。
プレスリリース 脳の神経活動の空間パターンは脳血流のパターンに写し取られる―安静時脳活動の詳細な時空間構造を神経発火と脳血流の両面から解明―
九州大学大学院医学研究院・東京大学大学院医学系研究科の大木研一教授らの研究グループは、安静時における脳活動の詳細な時空間構造、更にそれが脳血流に変換される様子を観察することに成功しました。
本研究結果は2016年5月16日(月)午後3時(米国東部時間)に「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」にオンライン発表されました。
プレスリリースてんかん発作時の特徴的な脳波を世界で初めて検出
大阪大学大学院医学系研究科脳神経感覚器外科学の貴島晴彦講師らの研究グループは、てんかんの発作時は、安静時に比べて、脳波に特定のカップリング現象が著明に現れることを世界で初めて検出しました。
本研究成果は、英国科学誌「Scientific Reports」のオンライン版で2016年5月5日(木)18時(日本時間)に公開されました。
Brain/MINDS パンフレット最新版
プレスリリース 微弱な電気刺激が脳を活性化する仕組みを解明 -ノルアドレナリンを介したアストロサイトの活動が鍵-
埼玉大学院理工学研究科 中井淳一教授(兼 脳末梢科学研究センター長)は、理化学研究所 脳科学総合研究センター
神経グリア回路研究チームの毛内拡研究員、平瀬肇チームリーダーらの共同研究グループとして、経頭蓋(けいとうがい)直流電気刺激がマウス脳機能に及ぼす影響とその作用メカニズムを明らかにしました。
この研究成果は、国際科学雑誌『Nature Communications』(3月22日付)に掲載されました。
プレスリリース 脳脊髄の髄鞘再生をMRIで可視化することに成功-多発性硬化症や神経再生医療に新たな「眼」-
慶應義塾大学医学部生理学教室(岡野栄之教授)、整形外科学教室(中村雅也教授)、内科学教室(神経)(鈴木則宏教授)、放射線科学教室(診断科)(陣崎雅弘教授)の合同研究チームは、MRIを用いて脳脊髄の髄鞘の再生を可視化することに成功しました。
本研究成果は、2016年3月2日(米国東部時間)に「The Journal of Neuroscience」オンライン版に掲載されました。
■掲載雑誌: Molecular Neurobiology
■タイトル(日本語・英語)
AAV9ベクターを用いたマーモセット中枢神経系への遺伝子発現の特性
■著者: 松崎泰教、今野歩、向井亮、本多文昭、平戸政史、好本裕平、平井宏和
■概要:
GFP発現AAV9ベクターをマーモセットに2通りの方法(大槽投与と小脳への直接投与)で行い、GFPの発現領域、細胞種及び細胞数を解析しました。
大層投与では中枢神経系に広く発現が見られ、小脳投与では小脳と小脳へ投射している領域に極めて効率的な発現、とくに全プルキンエ細胞の80%に発現が観察されました。
どちらの投与法でも脊髄の運動ニューロンに効率的な発現が見られました。
プレスリリース 代謝型グルタミン酸受容体mGluR1はシナプス刈込みを駆動して小脳神経回路を成熟させる
北海道大学大学院医学研究科・渡辺雅彦教授らの研究グループは、プルキンエ細胞に発現する代謝型グルタミン酸受容体mGluR1が樹状突起近位部からの平行線維シナプスを除去することで,異種入力線維のテリトリーが分離することを明らかにしました。
本研究成果は、2016年2月8日(月)出版の米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of
Sciences of the United States of America」で公開されました。
プレスリリース 統合失調症の大脳皮質下領域の特徴を発見 -淡蒼球の体積に左右差がある-
大阪大学大学院連合小児発達学研究科の橋本亮太准教授、東京大学大学院医学系研究科精神医学分野の岡田直大大学院生、笠井清登教授らの研究グループは、統合失調症において、大脳皮質下領域に存在する大脳基底核のひとつである淡蒼球(たんそうきゅう)の体積が健常者に比べて大きいという既知の報告を再現するとともに、その健常者との差に左側優位の非対称性が存在することを、新たに見出しました。
研究成果は国際的な精神医学雑誌Molecular Psychiatryの電子版に1月19日(火)午前4時(米国東部標準時)に掲載されました。
プレスリリース 新世界ザルのコモン・マーモセットで「ミラーニューロン」を世界で初めて発見
国立精神・神経医療研究センター 微細構造研究部の一戸紀孝部長、鈴木航室長らの研究グループおよび理化学研究所 脳科学総合研究センター
高次脳機能分子解析チームの共同研究により、同じ動作を自分がしても他人がしても活動する「ミラーニューロン」を、新世界ザルのコモン・マーモセット(Callithrix
jacchus)の前頭葉下部から世界で初めて見出しました。本研究による、遺伝子の改変可能なマーモセットでの「ミラーニューロン」の発見は、自閉症の原因解明、診断、治療への発展的研究に大きな貢献をすると考えられます。
スイスのオンライン科学誌Frontiers in Neuroscience - Evolutionary Psychology and
Neuroscience-にオンライン版で日本時間2015年12月10日15時に掲載されました。
プレスリリース「霊長類の大脳皮質で多細胞活動を長期間・同時計測」
理化学研究所 脳科学総合研究センター
高次脳機能分子解析チームの山森哲雄チームリーダーの研究グループは、テトラサイクリン発現誘導システムと呼ばれる遺伝子発現誘導システムを用いて、蛍光カルシウムセンサー蛋白質の発現を増幅することにしました。その結果、マーモセットの大脳皮質で触覚など体の感覚情報を処理する体性感覚野で、数百個の神経細胞の活動を同時に計測することに成功しました。
国際科学雑誌『Cell Reports』への掲載に先立ち、オンライン版(11月20日付け)に掲載されました。
大阪大学大学院 望月研究グループはA novel histone deacetylase 1 and 2 isoform-specific inhibitor
alleviates experimental Parkinson's disease
(パーキンソン病モデルにおける新規HDAC-1,2アイソフォーム特異的阻害剤の神経保護効果の検討)を発表いたしました。
成果は、10月8日に国際科学誌「Neurobiology of Aging」電子版に掲載されました。
プレスリリース 「神経伝達物質やインスリン分泌の新しい可視化法開発:分泌速度の謎を解明」
東京大学大学院医学系研究科 附属疾患生命工学センター河西教授の研究グループは蛍光寿命画像法を用いて、超高速開口放出をするシナプス前終末ではSNARE蛋白質が高率に複合化しており、これにより活性化領域が機能的に可視化され、シナプス結合の同定に利用できることを見出しました。
成果は、10月6日に(国際科学誌「Nature Communications」)電子版に掲載されました。
第一回公開シンポジウム「脳と心の時代 認知症等の克服に向けて」2016年2月27日(土)
プレスリリース 「生きた霊長類の脳内で神経細胞の「スパイン」を観察」
理化学研究所 脳科学総合研究センター
高次脳機能分子解析チームの山森哲雄チームリーダーの研究グループは、新世界ザルであるマーモセットの大脳皮質において、2光子顕微鏡を用いてスパインと呼ばれる神経細胞の微細形態を生体内で可視化する手法を開発しました。
成果は、米国の科学雑誌『eNeuro』に掲載されるのに先立ち、オンライン版(8月27日付け:日本時間8月28日)に公開されました。
プレスリリース 「アルツハイマー病の組織病変をズームイン」
理化学研究所 脳科学総合研究センター
細胞機能探索技術開発チームの宮脇敦史チームリーダーの研究グループは、生体組織を抗体や色素で染色し微細構造を保ちながら透明化する新しい技術を確立しました。この技術を使って、アルツハイマー病モデルマウスの加齢脳やアルツハイマー病患者の死後脳におけるアミロイド斑を、異なる空間解像度で定量的に観察することが可能となりました。
国際科学雑誌『Nature Neuroscience』への掲載に先立ち、オンライン版(9月14日付け)に掲載されました。
プレスリリース 「貯蔵された記憶を可視化・消去する新技術を開発―記憶のメカニズム解明に前進」
東京大学大学院医学系研究科 附属疾患生命工学センター河西教授の研究グループは学習・記憶獲得に伴いスパインが新生・増大することに注目し、これらのスパインを特異的に標識し、尚且つ、青色光を照射することで標識されたスパインを小さくするプローブ(記憶プローブ)を開発しました。
この記憶プローブを導入したマウスでは、運動学習によって獲得された記憶が、大脳皮質への青色レーザーの照射で特異的に消去されました。
また、各々の神経細胞における記憶に関わるスパインの数を数えたところ、大脳皮質の比較的少数の細胞に密に形成されていることがわかり、記憶を担う大規模回路の存在が示唆されました。
こうして、スパインが真に記憶素子として使われている様子を可視化し、また操作する新技術を世界に先駆けて確立しました。
成果は、9月9日に国際科学誌「Nature」電子版に掲載されました。
「日本認知科学会サマースクール」で革新脳セッションを行いました
7月31日神戸国際会議場メインホールにおいて、日本神経科学学会との共催シンポジウムを開催いたしました。
大規模な脳プロジェクト「革新脳」についてオープンな成果発表と討議の場を提供いたしました。
400名ほどの来場者で会場は熱気に溢れ、発表後の質問も数多く頂きました。
会場前に置いたパンフレットも全て持ち帰られ、改めて革新脳への強い期待を感じることが出来ました。
【13:30-13:55 4S01-1】
Brain/MINDS:日本におけるブレインマッピング・プロジェクト
山森 哲雄(理化学研究所・脳科学総合研究センター)
現在米国におけるBrain Initiative, 欧州におけるヒューマンブレインプロジェクト(HBP)などを含め全世界的に脳の神経回路全容解明を目指したブレインマッピングプロジェクトへ大きな注目が集められている。我が国では、革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト(Brain Mapping by Integrated Neurotechnologies for Disease Studies (Brain/MINDS))が2014年から開始されている。Brain/MINDSは、遺伝子改変が可能な小型の新世界サルであるコモン・マーモセットを用いるという特徴があり、A) 霊長類の脳構造・機能マップの作成、B) 霊長類の脳構造・機能マップの作成に寄与する革新的な解析技術の開発等、C) 精神・神経疾患患者および健常者の脳画像等データリソース統合にもとづく中核拠点霊長類回路マップと疾患研究チーム患者回路情報の連結の3つのグループに大別できる。講演では、Brain/MINDSの計画と展望について議論したい。
【13:55-14:20 4S01-2】
脳マップの作成と活用のための計算技術
銅谷 賢治(沖縄科学技術大学院大学)
「革新脳」のめざす霊長類の脳構造・機能マップの作成による脳機能と疾患の解明には、イメージングやゲノムなどの計測・操作技術だけでなく、先端的な情報技術の開発と活用が不可欠である。本講演では、イメージング等による3次元構造と時系列の大規模データの処理と解析、それらを統合するデータベースの構築、さらにそれを脳機能と疾患に関する知見につなげるための数理モデル化について、革新脳で計画している技術開発の概要について報告する。
特に数理モデル化においては、脳全体での認知行動機能を再現するマクロスコピックモデル、大脳皮質などの神経回路の計算原理を解明するメゾスコピックモデル、それらの細胞と分子機構を明らかにするミクロスコピックモデル、それぞれについて各レベルの大量かつ多様なデータを最大限に生かしたモデル構築手法の開発とともに、異なるレベルのモデルをつなぐ大規模シミュレーションと解析手法の開発が求められる。
モデル構築においては、ベイズ推定の枠組みによる機械学習技術をもとに、神経結合や細胞のパラメタの推定とモデル構造の探索手法の開発が進められている。マルチスケールのモデル統合においては、統計力学的な粗視化手法とともに次元圧縮などの機械学習手法の活用が求められる。これらに関して既存の手法のレビューとともに、新たな開発の現状と課題について報告する。
【14:20-14:45 4S01-3】
遺伝子で導入できる脳解析ツール
宮脇 敦史(理化学研究所 脳科学総合研究センター)
可視光を吸収あるいは放出するタンパク質を使って、脳の構造や機能を解析するためのセンサーやマニピュレーターが開発されてきた。そうしたツールを活用して、遺伝子改変実験動物の脳で起こる現象を深く、広く、細かく、そして速く、長く観る研究の実際を紹介する。また、可視光と相互作用するタンパク質が、「光と生命体との相互作用」を巡る人類の発見から生まれ、それらの生物学的存在意義に関する我々の理解を超えてますます有用になっていく過程を考察してみたい。
【14:45-15:10 4S01-4】
マーモセット脳の2光子イメージングと光操作に向けて
松崎 政紀(基礎生物学研究所 光脳回路研究部門)
近年、2光子顕微鏡の性能向上に加え、カルシウム濃度感受性蛍光タンパク質の開発が進んでおり、個体動物で多数の細胞活動を長期間計測することが可能となってきた。そこで私のグループは革新脳プロジェクトの技術開発個別課題として、マーモセット大脳皮質で多細胞活動の計測が可能な2光子顕微鏡の開発と、2光子イメージングを遂行中に実行可能な高次脳機能課題の開発を行う予定としている。これらの技術開発はこれまでに私たちが確立してきたマウスを用いた実験系の上に成り立っている。私たちはまず、頭部固定マウスにおいて右前肢を使ってレバーを操作すると水が与えられる、というオペラント運動課題を世界に先駆けて構築し、課題遂行中のマウスの大脳皮質運動野第2/3層の2光子カルシウムイメージングを行うことに成功した(Hira et al., 2013)。次にGCaMPをアデノ随伴ウイルス(AAV)によって神経細胞に導入することで、レバー運動学習中2週間という長期にわたって、運動野第2/3層と第5a層の多細胞カルシウムイメージング法、及びAAVが逆行性に取り込まれることを利用した皮質下投射細胞のカルシウムイメージング法を確立し、学習に伴って層ごとに異なる活動変化が起こることを見出した(Masamizu, Tanaka et al., 2014)。さらに、イメージング画像データからリアルタイムに標的細胞のカルシウム蛍光上昇を検出しその直後に水報酬を与えるという、単一細胞オペラント条件付けを確立し、条件付けを始めて15分以内に標的細胞活動が特異的に上昇することを見出した(Hira et al., 2014)。これらの方法論をマーモセットに適用可能とするため、頭部固定下での課題構築を始めるとともに、理研BSI高次脳機能分子解析チーム(山森哲雄チームリーダー)と共同でマーモセット大脳神経細胞の2光子カルシウムイメージング法の確立をめざしている。今回はこれまでのマウスでの実験系や2光子イメージング技術の現況などについてご紹介したい。
【15:10-15:40】総合討論
革新脳共催シンポジウム開催しました
朝日新聞 (7月12日) 「科学の扉」 で革新脳プロジェクトが紹介されました
「革新脳共催シンポジウム」7月31日(金) プログラムをご覧ください
プレスリリース 「飢餓により誘導されるオートファジーに伴う“細胞内”アミロイドの増加を発見」
東京医科歯科大学・難治疾患研究所/脳統合機能研究センター・神経病理学分野の岡澤均教授の研究グループは生きた脳の中の神経細胞におけるオートファジー
(自己自食)を観察する技術を世界で初めて開発し、アルツハイマー病態におけるオートファジーの新たな役割を解明しました。
成果は、7月14日に国際科学誌Scientific Reports(サイエンティフィック・レポーツ)電子版に掲載されました。
岡野栄之プロジェクトリーダーNeuron誌に総説論文 "Brains, Genes, Primates" を発表
学会英文機関誌 Neuroscience Research から特集号「Marmoset Neuroscience」が刊行されました
Brain/MINDS: brain-mapping project in Japan
岡野栄之、宮脇敦史、笠井清登
革新脳プロジェクトは(平成27年4月1日より)日本医療研究開発機構に移管されました
革新脳プロジェクト パンフレット掲載しました
2月11日(水・祝日)TBS番組『人間とは何だ…!?』で革新脳プロジェクトが紹介されました
論文掲載のお知らせ - Brain-mapping projects using the common marmoset
Brain/MINDS ウェブサイト開設
Brain-mapping projects using the common marmoset
岡野栄之, Partha Mitra